27.フェイクデレラ

ああ、ダメだ…。いろんな想いが、蘇ってくる。

指先の震えが、止まらない。
けれども、自分こそがその“サギリ”だったと、気付かれるわけにはいかない。
思いの外目敏い陽太郎に見咎められないよう、実は震える指先を袖の下へと隠す。

とはいえ、今の陽太郎は自身の事で精一杯だ。とてもじゃないが、それに気付けるような余裕はなさそうだった。

「だから、俺はあの時…。少しでも可能性が得られるんだったら、付け込んででも、サギリを繋ぎ留めておこうって……。狡いんだ、俺…。狡い……。真鍋も、そう思うだろ?」
「そんな……。筧くん…………」
「だけど、狡い事しても、ダメだよな? どう転んでも、良い結果に結び付くわけがない。だから……」
「だから……」
「ああ、サギリにとって俺との関係は、どこまでいってもその弱味に対するお付き合いでしかなかった。だから、そう……。どんな時だって、嫌々付き合ってくれていただけ…」
「嫌々……」
「だから……。何度、無意識に俺から逃げる身を引寄せて、俺の方へと無理矢理意識を向けさせようとしたか、分からない!!」
「……っ!!!」

嫌々じゃない。嫌々じゃなかった。でも……。

何度、陽太郎に突然腕を掴まれ…。引き寄せられ……。
そして、キスをされ…。奪われたか……。
………分からない!!

またしても報われなかった思い出が、自分達の間を切なく舞う。

「………だけど、そんなのだったから……。俺の方へと向いてくれる事も、なかったんだけど……」
「………………そう」
「うん…。だから、どんなに一緒の時間を過ごそうと、肌を合わせようと、サギリが俺の元から去っていってしまうまでの間、俺はその心に少しも触れる事が出来なかったんだ!! 少しも……」
「…………少しも」
「そう、だから!!! サギリの心ごと、どこかへ攫ってしまいたかった!! 攫って……」
「ぅっ……」

重たいぐらいの恋。……それを、僕は知っている。
本当に、心ごと攫われていたら、どんなに楽だっただろうか?

「真鍋、少しは同情してくれるか?」
「えっ……」
「でも、本当……。サギリと分かり合いたいのに…。愛していたのに…。最後までダメだった。俺は、本当に……。サギリが、好き過ぎて…………」

陽太郎も、その想いが重たいと感じていても、自分ではどうする事も出来なかったのだろう。
それが簡単に変えらるような想いだったなら、互いにどんなに楽だったか…。
陽太郎は、それだけ“サギリ”にのめり込んでいたし、実もそんな陽太郎に恋焦がれていた。

けれども、陽太郎自身それを感じていたから、サギリに遠慮しては葛藤し、それでもなるべく自分の想いを押し付け過ぎないようにと頑張っていた。その姿を、実は良く知っている。
とはいえ、最終的には、陽太郎は強過ぎる想いに逆らえないでいた。
そう、“サギリ”への想いが強過ぎるあまり、自身をも制御しきれなくなって、いつもその心を必死になって追い求めてきた。

痛過ぎるくらいに……。

「本当……。いつまでも一方通行で……。報われなくて、報われなくて……。あの頃の自分は、サギリも、俺自身も、苦しめるだけだった………」
「そ、それは……」

報われなかった。どうしても、報われなかった。
そして、いつも一方通行……。
僕達の心は交わる事がなかった。
けれども、僕はそれが分かっていても、本当の自分をどうしても曝け出せないままだった。

……それだけの事。




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Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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