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110.執着

だから、これは侠耶から利通へのちょっとしたサプライズ行事といえるのだ。

分かってる。そんな事は分かってる。
けれども、利通もれっきとした男なのだ。少しはその意地も張りたい。
だから、悪態の一つも付かないでは、受け取れやしない。

「何が心配だ? 心配してくれていたというなら、お前と俺との仲ではなく、俺の身の方だろ? とうとう捕まってしまったのかと、憐みぐらいは持ってくれるかもしれないけどな?」
「憐み……?」
「そうだ、憐みだ! 皆が、俺に同情してくれている筈だ!」

またしても、皆が一斉にギクリと身を強張らせる。

「……まっ、だが、侠耶? 俺がお前のものになったのも、事実だ! 年貢の納め時と言えば、そうかもしれない…………」

侠耶は、ニヤリとした笑みを口元に浮かべる。そして、幹事に向かって手を上げた。
だが、利通はそれにすかさず”待った”を掛ける。
侠耶の顔が、“何だ、まだあるのか”と苛立たしく歪む。

「待てっ、侠耶! それでもまだ、お前と式を挙げる事に、了承したわけじゃない!!」

再び、その場が凍り付く。しかも、先程以上にシーンと静まり返って、ピリリと張った空気が肌を刺す。
だから、幹事の沢村と持田なんて、侠耶の不機嫌そうな様子に、カチンコチンになっている。進行表を握り締めたまま、侠耶と利通の間で視線を忙しなく何度も往復させる。

だが、そんな沢村達の事なんて、構っている余裕はない。利通は、不服とばかりに自身を射る侠耶の視線を、負けじと睨み返す。
それらがぶつかり合った先で、火花が散る。
侠耶の双眸は、そうでなくとも猛禽類の鋭さなのだ。少々の火傷くらいは覚悟の上だ。
普通の者なら一睨みだって耐えられやしないだろうそれに、利通は瞳を僅かにも揺らがせる事なく対峙する。

ここで簡単に引き下がったら、全てが侠耶の思うツボだ!
それに、良い機会だ! その要求を呑む代わりに、俺もここで侠耶にはっきりとさせておいてやる!!

そう、侠耶の妻となる以上、それなりの覚悟が利通には必要となる。だからこそ、有耶無耶のままでは応じるわけにはいかないというのも、利通の心の中では一理あった。
いや、今はっきりとさせておかなかったなら、その機会にはもう二度と恵まれないかもしれない。

「どういう事だ? 年貢の納め時ではなかったのか、利通?」

その声の低い響きだけでも、侠耶が相当憤っているのが分かる。

「確かに、俺は“年貢の納め時だ”と言った! だが、侠耶! 俺にそれを受けて欲しいなら、今から言う話をちゃんと最後まで聞けっ!!」
「話?」
「そうだ! 俺は、何もお前との式を断固として挙げないとは、一言も言っていない。本当にお前のものになって欲しいと言うのなら、ここできっちりと約束しろ! 式を挙げるのは、それからだ!!」

敢えて過酷な自らの人生に、利通を引きずり込む事にした侠耶…。
利通には知りようもない事だが、その侠耶とて、自らの宿命を呪った日もあっただろう?
だが、侠耶はその運命から逃げる事もせず、生来のそれを享受して生きてきた。
置かれし立場を心得て…。

そして、そんな運命を利通にも共有しろというのだから、却ってその想いが半端なものでない事が良く分かる。
いや、そこまでの強い想いがあったからこそ、利通もその想いを受け止める事にしたのだ。

そう、その情熱に絆され、負けた。

もし侠耶が普通の男だったなら…。もしその想いが中途半端なものだったなら…。恐らく自分は男同士の恋なんて受け入れなかったに違いない!
だが、侠耶は利通に対して、いつも全力でぶつかってきた。体当たりの恋だ。

とはいえ、常識を知らぬ侠耶は、その手段も間違ったものばかりだった。それこそ、他人の目から見れば、侠耶が利通にしてきた無理ある行いの数々は、単なるエゴにしか映らない。
けれども、それは侠耶が不器用で、普通を知らぬだけ。いつでも、侠耶なりのスタンスで一生懸命自分の想いを伝えてきた。

今だって、それを理解している者は数少ない。利通も初めはそうした一人だった。
だから、あの香山がわざわざ利通の元に来て、頭を下げたくらいだ。“少々、誤解されやすいところがあります”と…。
だが、今なら、分かる。ちゃんと分かっているつもりだ。
そして、それを利通が知っていれば、十分だといえた。

とはいえ、その想いをしかと受け入れるからには、やはりそれ相応のものを、侠耶にも求めたい!!




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テーマ : 自作BL連載小説
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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
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