66.フェイクデレラ

とはいえ、その驚きの幅が大きかったのには、陽太郎の鈍さもある。
本当に、少しくらいは実の気持ちにも勘付いても良さそうなものだ!
そう、陽太郎が仮にもっと鋭かったら、実の言葉の節々から、その気持も直ぐに察せられていただろう。

”どうしてサギリを好きな陽太郎ではダメだったのか?”
”どうして陽太郎とのデートが楽しかったのか?”
その答えなんて、至極簡単だ!
……馬鹿だ!

とはいえ、陽太郎のこういう鈍いところは、その素直な性格が良く表れた部分だ。嫌いじゃない。

「そう…。だから、僕は陽太郎の事が好きだった。あの頃からずっと…、ずっと………。僕は、陽太郎の事が好きだった!!」
「えっ、えっ! ………でも、俺が体を求めれば、サギリはいつも嫌そうだった。俺は…、サギリの弱みを盾に取って……。だから、仕方がなく付き合ってるようにしか………。愛してもらってると感じた事は、一度もなかった!!」
「ぅっ!! …………そうだね。でも、陽太郎に抱かれて、今まで嫌だと感じた事は、一度もないんだ! ただ…」
「ただ…?」
「そう、辛かっただけ……。本当の自分でなく、偽りの自分に惚れている陽太郎を、相手にしているのが、辛かっただけ………」

そう、どこまでも平行線だった。想いも、SEXも、求めている相手はすれ違っていた。
陽太郎が顔をはっとさせる。合点がいったようだ。
それに、実が本物と偽りとの間でそのギャップに苦しんでいた事だけでなく、陽太郎を騙し続けていた呵責までも、悟ってくれたようだ。
いつも無神経なくらい鈍感だというのに、こういう時はどういうわけか敏い。

そして、……とても優しい。

「ああ、そうか………。だから、俺が求めれば求める程…。愛すれば愛する程…。知らず知らずの内に、真鍋を追い込んでいたんだ!! だから、俺の前から、忽然と………」

実は、それにコクリと頷く。

「でも、言える! 今なら、こうして言える!! 俺が愛しているのは“サギリ”じゃなくて、“実”だって……。……真鍋が自分の短所を向き合って、それに醜く足掻いて…。そんな人間らしいところも全てひっくるめて、愛しいって思えるんだ!! 本当に…、好きなんだ!!」
「陽太郎……」
「そして、ごめん…。そんな本当の真鍋の想いを知らなくて…、苦しんでる事にもずっと気付いてやれなくて…………、ごめん」
「陽太郎…………。ああ、陽太郎………」
「……うん、ごめん」
「だけど、何で…、陽太郎………。ずっと隠して、騙していた僕なのに、こんな…………。でも、ありがとう……。僕も、本当は陽太郎を愛してる………」

すれ違っていた心がピッタリと嵌り合う時は、こんなものなのだろうか?
今までの苦しみは、何だったのか?
それくらいすっきりと、全てのわだかまりが消えて無くなっていた。
陽太郎は恐る恐る両手を伸ばして、実の体を自らの胸の内へと引き寄せる。

「あっ、と……。俺がこうしても……、良いのかな…………?」
「陽太郎? …………うん、大丈夫!」

実もそれに応えて、陽太郎の背に手を回す。
頬に触れた陽太郎の体温、やや早い速度で規則正しく胸打つ動悸に、これが都合の良い夢なんかではなく、現実なのだと分かる。
感無量となり、陽太郎の身にしがみ付かせた指先に力をキュッと籠める。

「ああ、この腕に………。もう一度、“実”を抱きしめる事が出来るなんて……」
「ぼ、僕も……。こうして陽太郎を、抱き返せる日が来るなんて…………」

たとえ陽太郎の事が好きであっても、その腕を拒み続けなければならなかった日々は、もう過去の事だ。
陽太郎は実の台詞に顔をくしゃくしゃに歪ませ、何度も頭を振って頷く。そして、それと共に、腕により力を籠めた。

(良かった……、良かった………)

すると、実の双眸から涙がポロリ、ポロリと零れ落ちてきた。

どうしたというのだろうか?
今まではあんなに辛い思いをしても、陽太郎のようには素直に泣く事が出来なかった。それなのに、今になって……。
瞳の奥から、泉のように涙が湧き出してくる。

ポロリ……。

一雫が筋となって頬を伝い落ちれば、後はもう止めどなく目の淵から流れ出してきた。

ポロリ…、ポロリ……。

「よっ…、陽太郎…………、ぅぅっ…」

ああ、僕も情緒豊かな面を持っていたんだ。……こんな風にも、なれるんだ。
実の肩に重く圧し掛かっていた罪の意識も、この涙と共にふっと軽くなって解けていく。
実は陽太郎の胸に深々と顔を埋めると、声を上げて、本格的に泣きはじめた。
すると、陽太郎も実につられて、もらい泣きをする。
いや、陽太郎も同じように、この現実を嬉しく思っているからに違いない。それは、自ずと溢れ出た涙だ。

「真鍋、真鍋、真鍋………。ぐっ…、真鍋―――っ!!!」

そして、陽太郎は実の体をぎゅっと抱きしめたまま、いつものように大粒の涙を目から一杯溢れさせて、一緒になって延々と武者振り泣いた。

けれども、陽太郎の涙も、かつて流したそれとは全く違う色をしていた。

   * * *




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