63.続・執着~均衡~

「なら、宇賀神。答える前に言っておく」
「何だ、サソリ姫? いや、片岡利通さんか……」
「っ…」

ああ、そういう事だ。宇賀神も、やはり俺を対等と見なし、全権を委ねるつもりでいる。
礼節を示し、敢えて正式呼称を使ってきた。

「今回の件だが、もしそれで手を打ったとして、俺はあんたに靡くつもりはない。だから、薄くでも期待してもらっちゃ、困る! それでも構わないというなら、快く承諾しよう!!」
「ふん、上等だ! そもそも簡単に靡くような輩なら、俺にとっては何の魅力もない人間だったろうな?」
「っ……」
「まぁ、俺もこれからはじっくりと真っ向勝負で口説かせてもらうつもりだ! それに、俺としちゃ、これでもサソリの君へ宛てたプレゼントのつもりだ。だから、隙を見て口説くくらい許せ!」
「っ………」

利通を見据える宇賀神の視線がやけに熱っぽい事に耐え兼ねて、言葉をぐっと詰まらせる。

「だが、良いな! これで、双方に和解だ!」

利通もそれにコクリと頷き、侠耶と宇賀神の顔を交互に見渡す。
(ああ、この一連の抗争に折り合いが付いた…)

「宇賀神、そういう事だそうだ。だが、俺は今回の事を不問にしたわけじゃない。その代償分は、その利権できっちりと落とし前を付けさせてもらう事にしよう!! そして、これからお前がどう出てこようと、俺は二度と利通(コレ)に触れさるつもりはない。その事を良く心得ておくんだな!」

侠耶が、きっちりと釘を刺す。

「上等だ、受けて立つ!! 難攻不落となればなる程、燃えるってものだ!」
「っ…、ふんっ!」

気色ばんで、鼻息を荒くする。

「だがな、そうだろう? 錦織、お前も良く分かる筈だ!」
「……っ」

ああ、そうだ。侠耶も利通が逃げれば逃げる程、より追って挑んできた。

「とはいえ、俺も遅れ掛けに生き甲斐を見つけたもんだな? だが、死んでは元も子もあるまい。そろそろ、ここもヤバそうだ。悠長にしていては、炭になる。それは勘弁してもらいたいものだな? いや、サソリの君をみすみす灰にするなよ! ならば、利権の契約等の詳細については、後日連絡する!」

侠耶は、それに鼻をふんと大きく鳴らす。

「じゃぁな、サソリ姫!」
「…っ」

宇賀神は利通に穏やかな視線を送ると、身をひょいっと翻す。そして、舎弟達が割ったガラス窓から、一足先に地上へと軽々と降り立っていった。

(ああ、確かに早くしなければ、灰になる)

炎は益々と勢いを増している。この室内も炎を見ないまでもぐんと温度が高まり、いろいろなものが溶け出し始めている。その刺激臭に、目も痛む。
このままでは火が回ってくる前に、肺に煙を目一杯に吸い込んで死んでしまうか、もしくは家屋が崩れ落ちて、その下敷きになって圧死してしまうかもしれない。
だから、その前に…。

(一刻も早く、俺達も脱出しないと…)

折良く、戸外から侠耶と利通を呼ぶ香山の声が聞こえてきた。窓の下で脱出のサポートをしてくれるつもりでいるようだ。
侠耶を振り返れば、自らの怪我も顧みず、間近の窓を肘で割り破っているところだった。そして、顎をしゃくり、利通に先に逃げるよう促してくる。

先に逃げる事に躊躇し、侠耶の怪我にそっと触れる。

「俺なら大丈夫だ。利通、先に行け! もちろん、お前だけ残す事もしない。心配するな! いや、俺を信じろ!!」




さぁ、今度は火から逃げるぞ~!!

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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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