31.園さん、ついていきます

「でも、気がないっていうなら、それは俺にだってそうですよね?」
「えっ…」
「寮生活なんて他に楽しみもないですし、そんな中での娯楽というか、暇潰しっていうか…。でも、まぁ、ちょっとした楽しみは必要でしょうから、分からなくもないですけど………」
「………って、俺の事、そんな風に思ってるの?」
「違うんですか?」
「違うよ。蜂須賀は本当に“特別”なんだから…」

辛い…。分かってもらえない。
しかも、言うと同時に身体にピタリと纏わり付いた智晴を、蜂須賀は無下に引き剥がす。

(酷い…。はっきりした態度を見せているのは、蜂須賀の方じゃないか……。
やっぱり、これは失恋したのも同じって事だよね?)

鼻の奥がツンと痛んだ。
だが、男が容易に泣くわけにはいかない。
ましてや振られたからって、本人の前では泣けない。
なけなしのプライドぐらい貫いていたい。

「だから、そんな事言って、抱きついてこないで下さい。本当に勘違いしちゃいそうですから!! でも、俺、園さんのそれが遊び心だって、ちゃんと納得がいくような理由も、乃木坂さんから聞かされたんです!」
「だ、だから、何を? まだ他にあるの? 何をそんなに、乃木坂から聞かされたっていうの?」

もうヤケクソだ。形振り構わず叫んでいた。
普段の智晴からしたら、こんな取り乱した態度は見せたりしない。
これでも八方美人だ。如才なく振舞っている。
それが蜂須賀の前となれば、より一層……。

「その………、園さんって、本庁への異動願いを出しているんでしょ?」
「っ!!」
「しかも、ある事件のために、おとり捜査官を志願しているって。それが、園さんが警官になった動機だって聞かされました」
「そ、それを……、乃木坂が言ったの?」
「はい、教えてくれました」
「っ…」

スゥッと、血の気が引いていった。

「だけど、それは本当の事なんでしょ? ね、園さん!!」
「…………そ、そうだね。本当の事だよ…」

俺の志望動機…。
何だ、蜂須賀は知ってしまったんだ……。

聞いてしまったからには仕方がない。素直に認めるしかない。
それに、知られたからって何なのだ!
智晴にとって、蜂須賀は今までにない“特別”な存在だけど、優先すべき事は違う。
今の自分は、恋愛よりも祐輔の無念を晴らす事の方が大事な筈だ。こんな事で立ち止まっていてはいけない。

そうは思っても、ひどく傷付いている。
まだ自分の中で恋への踏ん切りが付いていない状態で、蜂須賀にその事を知られ、傷付いている。
それでも、自分が傷付いているなんて思いたくなかった。それを認めたら、祐輔の無念まで果たせなくなりそうだった。

そう、自分が果たさなければならないのは、色恋事ではなく、祐輔の無念だから。
何よりもの優先事項……。
今も遺体すら出てきていない祐輔のためには…。

だから、今から自分はなけなしの虚勢を張らなければならない。
そうなると、恨めしいのは乃木坂の口だが、それも打算だけで蜂須賀に明かしたわけではないのだろう。
それこそ智晴のため。その性格をよく心得ているからこそだ。




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