53.園さん、ついていきます

翌朝、乃木坂から電話が掛かってきた。
タイミングが良過ぎる。
恐らく蜂須賀と上手くいったのを見越しての事なのだろう。
本当に勘の鋭いヤツだ。

『で、どう? 一波乱あった?』
「どうって…。一波乱って…。そのまんま! 俺の声を聞けば分かるでしょ~~?」
『確かに…。麗しい美声も台無しの、酷い声だな?』
「まぁ、ね!」

乃木坂は、電話口を通しても分かるくらい大袈裟な舌打ちをした。

『最悪だ! 本当に最悪だ! 昨日は嫌な予感がしたんだよな?』
「勘の良い事で!」
『…って、違うだろ? 蜂須賀(アイツ)が刑事課への異動願いを出したって、小耳に挟んだからに決まってんだろ?』

相変わらずの情報通だ!

「そりゃ、早耳で!」
『で、嫌な予感の通り、アノ最中だったら嫌だからっていうんで、一日待ってから確かめようと思ったんだ。だけど、どうやら蜂須賀(アイツ)と上手くいったんだな?』
「御名答! その通り!」
『くそっ! 何が御名答だよ、そんな幸せ一杯の声で…。俺の気持ち、知ってる癖に……』

乃木坂は奥歯をギリギリと軋ませ、悔しがる。

「逆! 知ってるからだろ?」
『それでも、冷たいな……』
「それも、いつもの事だろ?」
『まぁ、ね…』
「それに、余分な情けは禁物。変な誤解を生むだけだって、お前も分かってるだろ?」
『情けね…。その情けでも付け込んで、縋りたいってくらいには、智晴の事を愛しているんだけどなぁ~~』
「…っ」
『でも、まっ、智晴が幸せになるっていうなら、それに越した事はない! っぅ…、仕方がないな。そうとでも言っておくか……」
「負け惜しみ?」
『犬の遠吠え? そんなところ!』
「っ……」

乃木坂も、目一杯の虚勢を張っているのだろうか?
そうは言っても、こんな軽口が叩けるようなら、そんなに心配も要らないのかもしれない。
立ち直る余地はある。

乃木坂はコホンと咳払いをすると、智晴にはっきりとした決別と餞別を送ってくれた。

『俺はね、正直なところ、智晴のような、いつ死んじゃうかもしれない恋人を持つのは、耐えられそうにない』
「っ…」
『だけど、そうだろ? 俺とお前とは同じ、打算的な性格だ。そんな割りに合わないものを許容出来る程、お人好しじゃない。蜂須賀(アイツ)とは、根本から違う』

そんな台詞を吐きながらも、乃木坂は大きなため息を付いた。
もしかしたらその割に合わないものを許容してでも、智晴と付き合って行こうと考えていたのかもしれない。

この乃木坂も……。

(俺は、そんなにも愛されていたんだね……)

『……っ、そうとでも言っておくか…。言っておかないと、仕方がないよな?』
「…っ」
『だけど、これからは一友人として、智晴の信念が報われる事を応援してる。だから、その事件を解決しろよ!』
「ありがとう。何から何までありがとう。世話になった。乃木坂の助けは、無駄にはしない!」

意外な智晴の素直さに、電話口の向こうで乃木坂が息を呑む。




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