5.探偵GJ

(だから、こっちは尾行してるんだ。そんな馬鹿デカい声…。その前に、俺に付いてくるなって言っただろ?)

それでも、急場凌ぎで教え込んだ通り、“勇人”と本名を呼んでこなかった事だけは褒めてやる。

「はっ?」

不機嫌を包み隠す事無く、ぶっきら棒に返す。

「そんな目くじら立てて~。Jちゃんみたいなのは、そういうのも似合うけどさ」
「っ…」
「だけど、そんな事よりも早くしないと、あのターゲットの二人を見失っちゃうんじゃないの?」
「なっ…」

(見失っても良いんだよ、バカ! それに、行先も分かってるってぇーの!)

一向に無駄話を止めない剛力の顏を、キッと睨み付ける。
だが、本当のところは、その両頬を抓って黙らせてやりたいところだ。
ここで目立つような事など出来る筈もないけれど。

大体からして、分かっている事をグダグダと言われるのもムカつくが、尾行していると分かっていてデカい声で喋り掛けてくるデリカシーと緊張感のなさに腹が立つ。

そもそも尾行というものは複数で行うものだし、何気ない一般人を装うものだから、時には会話もしながら歩く。
だが、あくまでも日常会話だ。ターゲットに関する話はしない。

(そんな事は、ド素人でもちょっと考えれば分かるだろ?)

今も勇人は一般人を装い、住宅街に溶け込んでいる。
グレーのカーデガンにデニム。それにリュックを背負った大学生風のラフな格好だ。
イヤーフォンを耳の孔に突っ込み、iフォンで音楽を楽しみながら自宅までの道のりを歩いて通っている様子だ。

だが、こういう何気ない日常の装いにするのが、尾行する上での鉄板。
大抵はターゲットの後ろに一人、向かい側の歩道に数人の複数体勢で追うのだが、どれもがコンビニなどの袋をぶら下げたり、携帯を弄ったりして、さも一般の通行人を装う。
違和感なく街に溶け込めないようでは、ターゲットにも直ぐに気付かれてしまう。

とはいえ、今は全くのプライベートでの尾行だ。
今日も勇人一人。単独で兄の跡を追うつもりだった。
当然の事だから、仲間の援護は受けていない。

だから、剛力の便乗は、思わぬ誤算!
頼んでもないのに、アホ面提げて勇人の尾行に勝手に付いてきた。
良いのか、悪いのか…。
目立たなくても済む代わり、始終勇人の横にピッタリと貼り付いていて邪魔でならない。

だからといって、騒ぎ立てるわけにもかないから自由にさせてきたが、もう我慢ならない。
仁科に尾行が簡単にバレてしまったのも、ほぼこの男の性に違いない。そう思いたい。
だが、本当のところは、それだけでもないのだろう。
仁科はそんじょそこらの男ではない。敏過ぎる。
だから、このアホ面がいようといまいと、結果は同じだったかもしれない。

(くそっ! …って、それ程邪魔でもないか………)

昨日出逢ったばかりの一般人。尾行のノウハウなんて全く知らない筈だが、邪魔だと言いつつも意外に邪魔になっていない。
勇人の意識下で単にその存在が邪魔に思えるだけだ。
思いの外、剛力も街に溶け込んでいる。
イヤーフォンの大学生にたまたま出くわした、その友人風だ!

しかも、このアホ面男も仁科に尾行がバレているのは百も承知なのだろう。
だからこそ、探偵ぶるのも止めて、こんな大声で勇人に話し掛けてきたのに違いない。

(要は、今日のところはもう止めておけっていうのか? 余計なお世話だ、止められるか!)




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