28.(9-4)鬼祓戦隊 節分(接吻)ジャー

だが、赤鬼に懇願するような目で見つめられれば、拒めなかった。
黒鬼が貼った入り口の護符を剥し、施錠を解く。
錠自体は差し込まれた横木をスライドさせるだけの簡単な造りだ。鬼でなければ、誰でも容易に外から開くことが出来るだろう。

そう、鬼でなければ…。

これだけ護符が四方八方に貼り廻らされている牢獄。たとえ青鬼や黄鬼が赤鬼の身を案じて決壊を破って立ち入ったところで、なす術はなかっただろう。

純は赤鬼に近寄ると、水分を失い硬く干からびた頬にそっと触れる。
シイタケの乾物のようだ。僅かな湿り気も感じられない。
だが、触れたところから、徐々に生気が漲り、元の艶を取り戻していく。

「ぁっ……」
「まことに巫女の力とは天晴なものだな…。感覚を失った肌が何事もなかったかのように生き生きと蘇ってくるようだ」
「っ…」

ついこの間まで、自分はごく普通の…。いや、それどころか冴えない人間だと思っていた。だから、未だに赤鬼との過去も、巫女の力が宿ることも信じられないくらいだ。
けれども、自覚がないだけで、その力を確かに秘めている。触れただけで衰えた赤鬼の肉体をこれ程にまで蘇らせることが出来るのだから。
もし赤鬼の望み通り、その唇に接吻を施せば…。
赤鬼は元の姿に蘇るかもしれない。

(赤鬼…)

思い切って自ら唇を重ね合わせてみる。

「み、巫女殿……」
「………んっ」

地の底を這う赤鬼の活力も、巫女の力でゆるりとだが着実に取り戻している。赤鬼の四肢から放たれる煌めきで、薄暗かった洞窟の中がこうこうと照らされ眩しいくらいだ。
けれども、赤鬼が切に望むものは己の肉体の回復よりも純の心なのだろう。口腔に潜り込んできた舌が愛しそうに、名残惜しそうに愛を語っていく。

優しく、優しく…。

先程、赤鬼は純に接吻を乞う代わりに死に値する覚悟を決めると言っていた。
この接吻が赤鬼との今生の別れになるかもしれない。
きゅっと赤鬼の体にしがみ付く。すると、赤鬼は満足そうに頬を緩めた。
これが鬼の反応なのか? そう思える程の情の深さだ。もはや目の前にいる鬼は“鬼”でなくなりつつあるのかもしれない。

純の心配とは裏腹に、赤鬼はいつの間にかに以前のようなみずみずしく艶やかな姿を取り戻していた。
頬にもほんのりと朱が差し、血色の良い顏をしている。

「ぁっ、赤鬼……」
「巫女殿…。何よりもの馳走であった。これで我には思い残す事は何もなくなった」
「……っっ」
「我も、直に転生ある身となろう」
「っっぅ…、だから、どういう……」
「どういうもこういうもない。そのままだ。これ、そこの青いの?」

赤鬼は、今まで心して二人のやり取りを傍観していた森木田の方へと視線を向ける。

「巫女殿をおぬしに託すのは憎々しい。だが、それも仕方あるまい」
「……っ」
「たとえおぬし達に我をここから出して貰おうと、今の我では黒鬼のヤツに歯が立たぬ。“鬼”という器はまことに不都合なものよのう。覚悟を決めた今でも恋敵のおぬしに協力する気は毛頭ないが、敢えて我がおぬしの個体に融合する事で、そちに“赤鬼の力”を授けよう。我とて思う、このまま黒鬼を好きなようにしておくわけにはいかぬとな。アヤツは鬼にとっても秩序を乱す悪じゃ」

(ゆ、融合…)

力の融合を試みれば、やはり赤鬼の心や肉体そのものはこの世から消滅してしまうという事なのだろうか。

「あ、赤鬼…」




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