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28.澤木兄弟

「この部屋の鍵」
「………っ」
「っっ…、別に深い意味はないよ。もし気分が良くなって、部屋に戻るというなら、これで鍵をかけてくれれば良いから」
「わ、分かった」
「本当は啓一の調子が戻るまで横についているつもりだったんだけど、悪かったな。それじゃ、行ってくるから。ゆっくりしていってくれ」
「あっ、ああ…」

 送り出す言葉のかわりに、素直に頷く。
 すると、怜二はホッとした様子で素早くスーツに着替え、家を慌ただしく出て行った。

(礼ぐらい言えば良かったかな?)

 そう思ったところで、すっかり機を逃がしてしまった。言うべき相手は既にいない。このまま言わず仕舞いになってしまいそうだ。

 とはいえ、慣れた手つきでネクタイを締める怜二は、やはり学生ぽい甘さが完全に抜け、以前よりも随分と良い男に見えた。

(本当に良い男になったな。昔以上にモテるだろうに…)

 どうして啓一が良いのか?
 啓一にさえ恋をしなければ、怜二も報われない恋に延々と苦しまなくても済んだだろうに。
 人より優れたものを持ち、恵まれた人生が約束されているというのに、上手くいかないものだ。

 本来の家主がいなくなると、急に居心地が悪くなった。
 折角用意してくれた料理に手を付けずに帰るのは忍びないが、そろそろ自分の部屋に戻った方が良いに違いない。そう考えて、フラリと立ち上がる。

 鴨居に吊るされたスーツを取りに行こうとして、部屋の隅のPCデスクに備え付けられた本棚に、数冊にわたって並ぶ厚いノートブックに目が留まった。

(もしかして手記というヤツか?)

 啓一にしてみれば、日記を付けるなんて面倒でしかない。
 けれども、マメな怜二の事だ。毎日の事でも十分考えられる。

(いや、むしろ怜二らしいか……)

 けれども、怜二は何でそんなものを記そうと思ったのか?
 叶わないと分かっていながらも、怜二は啓一への恋をずっと絶つ事が出来なかった。おそらく、その辛さを吐き出す場所として手記でも綴っていなければ、心の平静を保っていられなかったのに違いない。

(人にも言えない悩みだろうしな…)

 けれども、悩みはもちろんの事、ここには空白の期間にあった怜二自身の出来事についても綴られている筈だ。
 そう思ったら、急にその日記に興味が湧いてきた。
 今まで怜二の事には全くといって関心を寄せなかったというのに……。




 /  / 初回 / 登場人物紹介 / 総合目次1~3 / ※専用P2



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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
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