36.澤木兄弟

 怜二が隣に越してきて、あっという間に一か月の上が経った。
 この頃は心を入れ替え、啓一からも随分と怜二に歩み寄るようにしている。
 いや、むしろ半分利用している、甘えていると言っても過言ではないかもしれない。
 それぐらい怜二の家に入り浸って、甲斐甲斐しい怜二の世話を受けている。

(胃袋を手懐けられてしまってはな……)

 悲しい事に家事能力に乏しい啓一だ。自分ではほとんど料理をする事がなく、一人暮らしをするようになってからは、ずっとコンビニ弁当に頼ってきた。
 味に飽きようが、作る手間を考えれば文句は言っていられなかった。

 それが怜二に半ば強引に「一つ作るのも二つ作るのも手間は同じだから」と夕飯に誘われてからというのも、それがいつの間にかに習慣化し、怜二の心の籠った料理を毎日のように食べるようになった。
 もう以前の味気ない生活には戻れそうにない。

 それ程マメで器用な怜二の夕飯は出来合いの弁当なんかとは比べ物にならない魅力があったし、慣れ親しんだ実家の味を引き継ぐ怜二の料理はホッと一息付けた。
 だから、密かに今晩は何の料理だろうかと楽しみにしている。
 それに、怜二が営業という職業柄たびたびある会食や出張のために夕飯を作れなくて、外食せざるを得ない日はとても残念に思う。

 もちろん、怜二がこれほどまでに料理が出来るようになったのには元来のマメさがあるにしろ、それ以上に啓一への想いが絶ち切れない限りは家庭を持つ事は出来ない、身の回りの事は何でも一人で出来なくてはならないという思いがあったからなのだと思う。
 恐らく今でも啓一以外の誰かと結婚する気はないに違いない。

 だからこそ怜二と一緒にいると、強引な引っ越しをしたにも関わらず思いの他普通の兄弟のように接するようになった啓一に安堵する一方で、兄以上の気持ちを捨てきれない自分自身と葛藤しているのが痛い程伝わってくる。

 だが、啓一には怜二がどれだけ啓一の事を望んだとしても、その想いを受け入れる事は出来ない。
 お互いに複雑な思いを抱えながらも、“兄弟“として過ごしている。
 だが、そんな元の鞘に納まりつつある自分達の姿に後悔はない。良かったと思う。

 今日も啓一は怜二の部屋で夕飯を馳走になっている。
 きのこの炊き込みご飯にブリの照り焼き、キュウリの酢の物にお吸い物まで付いて。コンビニ弁当ではとても味わえないような献立だ。
 美味しかったから、食の細い啓一でもあっという間に平らげてしまった。

 けれども、いかにも夕飯目的だといわんばかりに直ぐ帰るのは忍びなくて、片付けのためにキッチンにたった怜二に感謝しつつ、ソファーに腰掛けTVを見はじめる。
 良い頃加減にお腹も膨れていた事もあってか、次第に心地良い眠気に襲われウトウトと船を漕ぎだした。
 そんな強い眠気に耐えられなくなって、ソファーの肘置きをまくら代わりにして横になり目を閉じた。




 /  / 初回 / 登場人物紹介 / 総合目次1~3 / ※専用P2



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


本館(当ブログ)目次↓
dreamtripbana.jpg
分館目次↓
dreamtripbana.jpg
twitter↓
@bakemogu53

ランキング参加しています!
よろしければ応援お願いします!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
人気ブログランキングへ


現在の閲覧者数:


おすすめトラコミ&サーチ
にほんブログ村 トラコミュ ボーイズラブへ
ボーイズラブ
にほんブログ村 トラコミュ BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!へ
BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!
にほんブログ村 トラコミュ 小説15禁・18禁(性描写あり)へ
小説15禁・18禁(性描写あり)

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント
QRコード
QR