38.澤木兄弟

「そういえば、怜二…」

 ローテーブルに向い合せ、怜二の作った晩飯を共に食す。
 もちろんあの日以来、怜二の振る舞いに預かっても、長居し過ぎることなく節度あるところで自室に引き上げるように心がけている。
 少しみずみずしい気もするが、そんな風だから表面上はよい兄弟関係が築けているのではないかと思う。

「ん、何?」
「怜二、今日、うちの会社に来たんだってな」
「ああ、行った。行ってきた」

 この話題は照れ臭いのか、ぶっきら棒な返事が返ってくる。
 それでも啓一がその事を知っていたのが嬉しいのだろう。切れ上がった目尻がほのかに緩む。

「うちの女子が騒いでたぞ」
「はっ、女子?」

 怜二にとっては啓一が全て。物事の基準はそこにあるから、女子の反応にはあまり興味がないのに違いない。
 それどころか、途端に面倒臭そうな顔をした。
 啓一と同様に、女子に無闇にチヤホヤとされるのは苦手なようだ。

「そんな顔をするなよ。分かるけど……。だけど、口を揃えて、お前のところの営業はみんなイケメンだって褒めてたぞ」
「ああ? ……イケメンね」

 そこに自分も含まれているとは思えないような反応だ。

「全然、興味が無さそうだな?」
「人の事は言えないと思うけど」
「まぁ、そうだな。だから、そこはいいや。だけどな、わざわざ俺のところにまできて、そのうちの一人が俺に似ているって報告しにきたぞ」
「っ…」
「興味本位も良いところだな? しかも、取り付く島のない俺と違って、弟の方は愛想が良いって」
「ぅっ……」

 怜二は罰が悪そうにする。
 厭味をまぜてみたところで、本当のところは照れ隠しだ。他から実弟を褒められるのは悪くない。誇りに感じたのだ。
 以前の自分なら、怜二に嫉妬していたところだ。

 いや、”嫉妬”はした。優秀な怜二と比べられる事に辟易としたのではなく、独占欲というのだろうか。怜二達をチヤホヤと持て囃す女子を煩く感じたのだ。
 そんな風に、怜二を追う女子の視線が気になったのは初めてだ。

 それは自分でも何かおかしいと感じた。だから、怜二が社を訪問してからというもの、ずっと心中穏やかでなかった。
 それでもそう感じるのはマズいと思ったからこそ、必死にその感情に蓋をしてしまった。




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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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