21.宝珠の夢(絵あり)

イセリーニエの唇付けは何だったのかと思いつつ、それに対して全く不快さを感じなかった自分に驚く。
以前の自分なら、男性からそういう対象とみられるなど以ての外! 不愉快としか思えなかったからだ。

そういう意味でも、イセリーニエはミュルゼンにとって特別な存在となりつつあるのは確かなようだ。

そして、そんな複雑な気持ちのまま、イセリーニエとの旅はあれ以外の事は表立って変わる事もなく、続いている。
ただ、自分の意識が過剰なのかもしれないが、時折イセリーニエの視線を感じる事がある。それに対して多少の気まずさを感じないわけではないが、それがイセリーエからのものだからか、やはり不思議と不快は感じないのだった。

そして、ホロに揺られるままに、夜に差し掛かった頃、目的のギルドに到着する。本来ならこんな時間に訪れるのは望ましい事ではないのだが、刺客に遭遇した事で予定を変更しての旅立ちとなったため、それにより当初の予定も狂ってしまったのだから致仕方ない。
イセリーニエとミュルゼンは取りあえずのところ晩御飯は後回しにして、本日の宿を探す。
結構規模の大きいギルドであるこの街は、宿の数も多ければ、その質もピンからキリまである。けれども、目ぼしいところはどこも賑わい埋まっていて、値段が破格に高いところか、小汚い宿しか残っていない。
とはいえ、精を出して何軒か渡り歩くうちに、比較的良さそうな宿を見つける。幸い大きい通り筋から奥まったところに位置しているからか、まだ部屋数にも余裕があった。
二人はすぐさまそこに宿を決めると、荷物を運び入れ、晩飯をとるために外に出かけた。

大通りに入り、良い定食屋を探して、広場方面に向かって歩いていく。
広場では、今どさまわりの踊り子たちの興業が催されているのか、その中央に白い大きなテントが張られている。そして、それを観に来たお客や客の呼び込みをする係りの者の声が飛び交い、賑やかに華やいでいる。
二人はそれを横目に見遣りながら、その前を通り過ぎる。テント脇にはそのショーに出る踊り子たちが派手な衣装に身を包み、自分の出番が来るのを待ち控えているのが見えた。

すると、その中に周りから頭1つ分抜きんでた長身の一際目立つ男に目が惹きつけられる。
透き通るような薄い紫の髪をした青年で、中肉中背というより、ダンスで培われたのだろうか、しなやかでいて引き締まったソリッドな体躯をしている。
顔もパーツの一つ一つが大造りに整い、反り繰り返るような長い睫で縁どられた垂れ目が印象的で、見る者を否応なしに惹きつける。しかも、色黒の肌からは何ともいえない色艶とエキゾチックさが漂い、一目見たら忘れられないような印象深い面持の美男子であった。

けれども、その男! 単なる踊り子風情というだけではないようだ。
というのも、その秘めた内から溢れるオーラが只者ではない事を物語っている。そう、彼もイセリーニエやミュルゼン同様、力を隠しているだけの破格の能力者のようだ。

しかも、その傍ら直ぐ近くに控える薄いブルーの髪をした美青年、その彼も踊り子風情の男同様に只ならぬものを感じさせる。その美青年の方は踊り子ではないのか、きっちりとした身なりの洋服に身を包んでおり、線が細く整った面持は、どこか神経質そうである。
けれども、その分、傍らの男とは対照的に利発な趣があり、能力者といえど、彼は・・・。

戦士というより賢者?!

兎に角、格段の隠された能力といい、異なる雰囲気の二人が連れ立っている事といい、尋常な事とはとても思えない。
それに、またもやペアというのが気になる。

houzyu21.jpg


彼らは、この前とは別の新手の刺客?!

ミュルゼンは思い当たった結論にぞくりと肝を冷やし、傍らのイセリーニエの横顔を窺う。
けれども、そんなミュルゼンの心配はよそに、イセリーニエは今まで見た事も無いような呆れ顔というか、歓迎しない知り合いにでも遭ってしまったといわんばかりの嫌そうな白々とした表情をしている。

・・・イセリーニエ?

しかも、男の方もイセリーニエに気付いたのか、「イセリーニエ」と大声を発し、手をブルンブルンと、外見に似合った派手なパフォーマンスでアピールする。さも懐かしく古き良き知り合いとでもいうような親し気な様子だ。
けれども、イセリーニエはというと、余程会いたくない人物なのか、益々顔に嫌気を纏わせる。

この人達・・・・、イセリーニエの知り合い?

更に男は声をかけるだけでなく、イセリーニエの思いを悟ってか、余計にイセリーニエに向かって歩を詰めてくる。
すると、余程歓迎しない相手なのか、イセリーニエの綺麗な顔には深々とした眉間の皺が刻まれている。
「そんな厭そうに・・・。」
「マリオン・・・。腐れ縁か・・。こんなところで、お前なんぞに、また会うとはな・・・。」
「またまた酷い言い草だな? イセリーニエと俺との仲だろ?」
マリオンと呼ばれたその男は、言葉だけでなく、嫌がるイセリーニエの肩を親しげに抱く。
すると、イセリーニエはさも悪い菌でも除けるように、その手を打ち払う。

「お前との間に、そんな美しく親しいような仲などない。いちいち誤解を招くような、変な言い方をするなっ!!」
「誤解? 相変わらず、石頭なんだからっ。何? 隣の彼に変に誤解されたくないんだ? 面白くないっっ。」
「お前とは違う!」
「でも、同じ釜の飯を食った、いわば竹馬の友ってヤツじゃないかっっ。本当、冷たいな。」
「お前相手じゃ、冷たくもなる。」
イセリーニエはそう嫌気満々で吐き出す。余程不都合な相手なのだろう。けれども、普段とは違う子供っぽいイセリーニエの対応に、何故だか微笑ましいものを感じる。
同じ釜の飯を食べた仲というだけあって、このマリオンという男とは心底気心知れる仲のようだ。

「ヒドイ・・。でも、安心しろっ! 俺には誤解してでも妬いて欲しいようなマイ・スウィートがいるのさっ!」
「彼は、単なる賢者(仲間)じゃないのか?」
「いんや、俺の生涯を捧げるっ!! マイ・スウィート・ラバーっ!!!」
言葉を失うイセリーニエにかわって、業を煮やした美青年が間髪を入れずスパンときれいにマリオンの頭を叩く。良く見ると、その神経質そうな綺麗な顔が僅かに歪んでいる。イセリーニエと同様、マリオンには手を焼いているといった感じだ。




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けいったんさん

> しかし 個性の強い御方のようで。
> ウザキャラ担当のマリオンの登場で この作品が、ガラッと変わりそうですね
笑、笑、笑っっ。
真面目モード一変?!
彼のおかげで?くだけた雰囲気が混ざってくる事でしょうっっ。笑!
いや・・・、息抜きキャラ?!
やはり、私。根がこんなのだから、いつまでも真面目モードでいられないようですっっ。笑!

ちょこっとウザウザ続きますけど、それが終われば、いよいよ謎の方の大詰めです!!
って、年末年始に入って、更新できなくなっちゃったりしてっっ。
あせあせあせ・・っっ。

No title

お仲間(同志?)の登場~!
しかし 個性の強い御方のようで。

ばけもぐ様が以前言われた2人!
この2人が入っての 珍道中が始まる・・・ですよね?

ウザキャラ担当のマリオンの登場で この作品が、ガラッと変わりそうですね
( *´艸)( 艸`*)ププッ...byebye☆

プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


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