24.宝珠の夢(絵あり)

いよいよ、謎解明に向けてGO! ここより現実世界がしばらく続きますが、目の離せぬシーンの目白押しですっっ。笑!




泉希ははやる思いで、合宿の稽古が終了するや否や場所を替え、高波と合流した。
まだ熱心な運動部は練習を終えていないのか、グランドの方から威勢の良い掛け声などが聞こえてくるが、夏休み中の教室は静かなものだ。
「高波? 今日はもう部活の練習の方は良いの?」
運動部に所属する高波も、本来ならまだ練習のある時間帯で、おそらく高波の所属部も活動しているに違いない。

「いえ、良いです! 自分の場合、今日は文化祭劇の合宿という事で、練習は免除してもらってるんです。だから、構いません!」
「そう・・・。それなら、良いけど・・・。」
一応のところ、泉希に心配をかけまいとして、そう言ってくれているのだろうけど、もし自分の呼び出しなどが無かったなら、高波は練習に合流していたに違いない。
とはいえ、高波もそんな泉希以上に今自分に置かれた夢と現実との状況が、気がかりとなっているのも確かなのだろう。高波は、前置きはそれくらいにしてとばかりに、泉希に真っ直ぐに視線を向けると、表情を引き締める。

昨日の事。合宿1日目だった昨日、高波は舞台での立ち稽古で、劇の登場人物の名前である“ミュルゼーヌ”と夢の住人の名である“ミュルゼン”とを取り違えた。その事で、泉希は夕食後の空いた時間の隙をついて高波を呼び出すと、今まで触れられずにいたその件について問うてみた。
「あの・・。高波? 突然で変に思うかもしれないんだけど、今まで聞きたかった事があるんだ。良いかな?」
「はい、良いです。自分も相羽さんに聞きたい事があるんです。」
そんな感じの切り出しで、二人は幼き頃より見続けている不思議な夢の世界についての事を話し始めた。

「高波・・。実は幼い頃から見続けている夢があって、その世界があの劇の世界にそっくりなんだ。」
「・・・・・。」
高波はやはりといった感じで、その泉希の台詞に言葉を失っている。
「それでね。そこに登場する人物の一人が、その劇と同じイセリーニエという名前で、その・・・。高波に瓜二つなんだ。」
そこで、初めて高波が言及する。

「相羽さん!! それ、本当ですか? やっぱりあなたもあの夢の住人なんですか!!」
「そう。そのミュルゼンとしてだけど・・・。今日、高波があの劇の中で『ミュルゼン』と言い間違えなかったら、おそらく聞く勇気は持てなかったんだけど・・・。」
「打算とかで言い間違えたんじゃなくて、ただ単にいつもの癖で、そう叫んでしまっただけなんですけど・・・。そうですか・・・・。それなら言い間違えて、かえって良かったです。俺も小さい時からずっとその夢を見てるんですけど、それって普通じゃないから・・・。変に思われるんじゃないかと思って、ずっと言えずにいたんです。」
高波も泉希と同じで、心からこの事をずっと問いたかったとみえ、声音はしみじみとして感慨深い響きがある。けれども、その反面、湧き上がる興奮を隠す事も出来ないといった様子で、顔は高揚してほんのり赤らみ、語り口調もいつもより早めだ。そして、その表情からはいつになく真剣みが滲み出て、決して作り話だと馬鹿にし面白がっているようには見えない。

「でも、『言えずにいた』って・・・。全然そんな風には見えなかった。高波って、普段は落ち着いて見えるから、ちっとも同じ夢を見ているような素振りなんて、なかったし・・・。」
泉希は堪え切れず、ぷっと小さく笑いを漏らす。
「落ち着いてなんて、いないですよ。最初、渡り廊下で相羽さんに会った時なんて、驚き過ぎて、一瞬夢か現実か分からなかったくらいですよ。俺、あの時、動揺し過ぎて、すごい無表情だったでしょ? って、覚えてませんか?」

今まで以上に打ち解けた感じで、泉希はそれに「そうかな?」などと相槌を打つ。
その後も、短い時間だったが、「気になって図書館に行ってみた」だとか、「劇がその夢に似ていた、これまた驚いた」だとか、「だから、柄にもないのに、原作を読んだんだ」などと、今までの事を高波と語り合った。
取りあえずのところ、共有する仲間を得た事は、泉希にとっても高波にとっても、喜ばしい事であるとともに、心強いものだった。
そして、二人は“その夢がお互いに同時進行で進んでいる事”などを一応に確認し、更に明日の合宿終了後に再び落ち合う事を約束して別れたのだった。

それで、今に至るのだが、一夜明けると状況が変わる。
何せ現実世界では合宿まっただ中だろうと、眠りに就けばあの夢を見る!!
昨日はあの高波の“ミュルゼン”発現には相当驚いたものだったが、それ以上に昨晩の夢には驚きがあったのだ。
そう。イセリーニエとミュルゼンは、晴れて他の2人のメンバーと合流を果たした。
けれども、驚いた事はその事ではない! それは原作にだって記してある。ついにその時が来たというまでだ。
では、何に驚いたか? それは、その2人のうちの1人の人物にだった。

「高波・・・。昨日の夢だけど・・・。」
「相羽さん。俺もその事を尋ねたいと思っていて・・。もう今日なんて、劇の練習も手つかずで・・・。」
「あの賢者のタカラッシュさんって・・・。」
「そうですよ。どことなく、3年の富岡さんに似てますよね?」
やっぱり!! 高波も同じことを・・・・。

houzyu24.jpg

「そう!! 雰囲気とか線の細さとかは異なるけど、何となく似た感じといおうか・・・。富岡先輩に劇の原作の事を尋ねた時に、ちらっと“お兄さんがよく借りてくる本なんだけど”って、おっしゃったんだけど、もしかして・・・・。」
その話に高波は、泉希と同じ結論に辿り着いたようで、顔を見合わせる。
「そのタカラッシュさんって、もしかして・・・・。」

「富岡先輩/富岡さんのお兄さん?!」

二人同時に声を上げ、言葉をハモらせる。
そして、高波は、泉希と出会った事に引き続いて、こちらの現実世界で手がかりとなる更なる人物である富岡の兄に、早くも接触を試みようと考えを巡らせ始める。
「ああ、でも・・・。お兄さんか・・・。でも、どうやって・・・。富岡さんに願い出てみるっていうのも、面識のないお兄さんとというのは、やはり変な話だし・・・。」
「あの、高波? その事なんだけど・・・。富岡先輩に原作の事を尋ねた時に、そのお兄さん市の図書館で司書してるって、言っていたんだ。確か、○×中央図書館。ここからだと区は違うけど、今から行けなくもない。どうする?」

その勤務先については、後日富岡とお礼がてらの雑談となった時に、何気なしに泉希が尋ねたところ、「相羽なら、大丈夫か・・・。俺! ブラコンだから、内緒だぞ!」と言って教えてくれたのものだった。
泉希が住まうこの市は区政をしいた大きな自治区で、図書館は区毎に概ね1つの割合で存在する。富岡のお兄さんは、その中でも取り分け規模の大きい市の中央図書館に配属されているのだった。
そこへは、この宝聖高校のある区からはJRから地下鉄へと乗り換えをしないといけないものの、さほど遠いものではない。それに、高波の都合は分からないものの、その図書館は19時半までしており、自分一人今から向かっても良いとさえ思っている。




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けいったんさん

あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。
そして、お返事が遅くなって申し訳ないです。
今日の夜中帰宅したばかりでバタバタとしていますが、落ち着き次第この後の執筆を開始しますっっ。笑! 

> 脚本を書いた冨岡先輩が、タカラッシュ本人じゃなく 兄さんなの?
お兄さんにしてみました 笑
理由は単なる作者都合なのですけどねっっ。笑
そして、折角なのでツンデレキャラにしてみました。←ここは好み?!

No title

やはり 高波も夢を見ていたんですね!
しかも 同時進行って 凄い!?... Σ(゚ω゚)b

2人が、ちゃんと分かり合えたなら 後は仲間を見つけるだけ~♪

脚本を書いた冨岡先輩が、タカラッシュ本人じゃなく 兄さんなの?
クール美人の図書司書さん♪
妄想倍増っす!いいんでないかい~~σ(*´∀`照)えへへ

日頃のグウタラ主婦(主腐?)生活のツケが、この時期に押し寄せて来て バタバタの日々。
ばけもぐ様も 帰郷されるそうで くれぐれも お体に無理の無い様に!
素敵な年末&年始をお迎え下さいませ。
{{{{(|||▽|||)}}}}サムゥ・・ーーーーー・・・・・・・byebye☆

プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


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