スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

27.宝珠の夢

泉希と高波は同時に声を張り上げる。一瞬周囲の様子が気になったが、おやつタイムが過ぎた店内はそれほど他に客が多いわけではなく、取り立てて二人の声に注意を払った者もいない。
二人は気を取り直し、富岡の兄に視線を戻し、腰を折ってしまった話の先を促す。

「でも、考古学って・・・。高校では習っても歴史くらいだし、さっぱり分からない分野ですけど、それと関係が?」
高波は元来の文系への苦手意識をさらけ出しながらも、無知であるこの分野についての教えを正直に乞う。
富岡の兄はそれについては気にしないようにと、茉莉緒を指さし「こいつもそうだから」と、朗らかな笑みを浮かべる。

「そして、その彼女が丁度専攻としていた時代というのが、日本ではちょうど古墳時代でね! その頃の日本はというと、中国からの文化や思想が渡来人によって、同時代朝鮮半島に栄えていた高句麗・新羅・百済を経、はるばる海を渡ってもたらされていたんだ。それは、日本史なんかでも習ったんじゃないかな?」
「ええ」と頷く泉希に対して、高波の返事は心もとない。
「で、彼女は古墳からの馬具(バグ)や古鏡といった出土物や古墳壁画から、当時の文明の伝播について研究していたんだ。そして、彼女の研究論文の中でも特筆されているのが、当時の中国の思想の“四神思想(シシンシソウ)”についてなんだ。」

「“四神思想”!!」

再び泉希と高波は声をハモらせる。けれども、その言葉を聞いても、それが何であるかはさっぱりと分からない。
「それって何ですか?」
だから、すぐさま富岡の兄に尋ねる。

「四神とは、中国で信じられていた珍獣の神で、“青龍(セイリュウ)”・“朱雀(シュザク)”・“白虎(ビャッコ)”・“玄武(ゲンブ)”の事なんだが、最後の玄武とは“蛇と亀”が絡み合っているモチーフなんだ。それが、日本では高松塚古墳や藤ノ木古墳にキトラ古墳、朝鮮半島でも高句麗古墳群などの玄室内の古墳壁画に描かれているんだ。更には、古鏡の中にはそれがモチーフとして描かれているものもあって、その鏡を特別に“四神鏡(シシンキョウ)”と呼んだりしてね。だから、結構当時ではポピュラーな思想だったと考えられるんだ。」
富岡の兄の専門分野は知らないが、夢への追跡のためか、彼女の研究分野について明るい。いや、この聡明さは、こちらの世界でも自分達にとって、彼は賢者のような存在といえるのかもしれない。

「しかも、面白い事にそれぞれ四神が、方角、色、季節、老若などを司っているんだ。」
「方角、色、季節、老若・・・。」
「そう。」
泉希達がここまでのところを一応に理解している事に、富岡はの兄は大きく頭を振って、満足感を示す。そして、ボールペンを取り出すと、泉希達が理解しやすいように、紙の端切れに図式を書き始める。

四神思想図

「壁画もこの図に倣って描かれているんだけど、龍・鳳凰・虎・蛇亀の順で、それぞれ“東南西北”を表す。壁画の中には方角を強調を含めた事もあってか、縮星図を天井に描いている古墳もある。そして、それぞれ“青・朱(赤)・白・黒”、更に“春夏秋冬”を示している。君たちも“青春”という熟語や、歌人の北原白秋で、今も知らず知らずのうちにその思想に触れている筈だ。」

「でも、それがどうしてあの本と?」
高波が言うとおり、まだその彼女の専門分野である四神思想と『龍の宝珠』、しいては夢の世界とが、どう関係しているのか分からない。
富岡の兄は高波の疑問を受けて、深く頷き返すと、「そこで、これは俺の推測なんだが・・・」と、再度話を続ける。

「あの夢の世界で、俺達はいわば不老不死のようなものだろ? 格段の力を有する能力者である俺達の成長は、一番良いみずみずしい時期・・・。いわば、“青春”の頃合いで、成長が止まってしまっている。考えてみれば、不自然な事だ! だから、あのカトリーヌが描く夢の世界は、“青龍の世界”そのものなんだ!!」

「“青龍の世界”・・・。」

そう呟くと同時に、逸早く高波が富岡の兄に詰め寄る。
「じゃ、その・・・。東とか、龍とか、そういうのも関係あるって? !!!」
興奮し、その語気の荒さに、ずっと黙っていたが茉莉緒がようやくの事、口を開く。
「意外に現実のイセリーニエはっ、血気盛んだなっ。」
「いや、つい・・・。」
言葉の先ではそう言うものの、何故か高波はこの茉莉緒に対しては、初対面である事に加え年下なのに、そういった事だからという遠慮は見られない。これは、夢の世界で相当に気心がしれた仲だったという証なのかもしれない。

けれども、泉希は腰の折れてしまった話に注意を引き戻すために、一つ可愛らしい咳払いをすると、「それでどうなんですか?」と富岡の兄に意見を尋ねる。
「確証はないものの、高波君が言った通り、そうなんじゃないかと思ってる。原作では俺達が出会ったところで終わっているが、これからそれらのキーワードを手掛かりに、あの夢の世界を終わらせるべく、俺達は動いていくんじゃないかと思うんだ。そして、それこそ! 志半ばで亡くなった彼女の気掛かりであり、書きたかったところなんじゃないかと思うんだ。」
「じゃ、それで俺達はずっとこの夢を見続けた?」
「そうなんじゃないかな? あくまで憶測だけど・・・。」




更に古鏡について読んでみようという方は「続きを読む」にて。

  /  / 初回 / 総合目次

拍手がわりに、こちら↓ よろしければポチリとお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村 
古墳の埋蔵物として納められた鏡は、中国製のものと、それを模倣して日本で鋳造されたものがあって、後者を仿製鏡(ホ/ボウセイキョウ)と言います。そして、その仿製鏡は技術的に未熟で、全体的に質が悪いのが特徴です。

そして鏡には、紐(ツマミ)を中心にして、四方八方に4~8くらいかな?の小さい突起である乳(ニュウ)が配されています。そして、その乳と乳の間にモチーフが配されています。
上の小説にあげた四神意外に、その他の禽獣(→禽獣鏡)やさしがねのような定規のような幾何学模様(→方正規格鏡)などがあります。
更に、鏡の中には銘が刻まれているものもあり、当時の関わり合いになった中国の年代が分かる事もあります。

  /  / 初回 / 総合目次

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村 

テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

けいったんさん

いきなり勉強分野です。笑
でも、この説明がないと語れないかしらんと思い、結構詳細にいれてみました。

それにしても、けいったんさんは実際に行って、壁画を見て来られたんですねっっ。スゴイっ!
雨水で壁画が消失とかいう事件もあったくらいだから(復元されましたけど)、きっと貴重な体験だったかとっ。
そういう私はこのネタで小説書いていて、行った経験0です。笑
過去にレポートや発表などをしなくちゃいけなくて、文献あらったくらいです。

> で、何をするの...ヾ(@~▽~@)ノほぇ?...byebye☆
どうしようっっ。お笑い単細胞な私ですので、おそらく”えっ!!! これ?”な方法です。
みんなが”怒”となるのが、少々怖い私です。ホホホッ。

No title

歴史の勉強スカ!古墳、四神思想...Σ(。∀゚○p[What?]q

遠足で飛鳥に行って 古墳も見たし、壁画の四神も見たし、作文も書かされたのですけどねぇ~
今は、忘却の彼方ですわ♪(笑)

夢の世界を終わらせる!?
四人が揃った事で 出来るんだ。
で、何をするの...ヾ(@~▽~@)ノほぇ?...byebye☆

プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


本館(当ブログ)目次↓
dreamtripbana.jpg
分館目次↓
dreamtripbana.jpg
twitter↓
@bakemogu53

ランキング参加しています!
よろしければ応援お願いします!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
人気ブログランキングへ


現在の閲覧者数:


おすすめトラコミ&サーチ
にほんブログ村 トラコミュ ボーイズラブへ
ボーイズラブ
にほんブログ村 トラコミュ BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!へ
BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!
にほんブログ村 トラコミュ 小説15禁・18禁(性描写あり)へ
小説15禁・18禁(性描写あり)

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。