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4.ニアピンな腐れ縁

主将となった大学三年の初夏。
夏休み直前の前期テストが終わり、2週間ぶりの練習を再開する。弓道は1日でも引かなければ、感覚が鈍る。学生にとっては、かなりのブランクだ。
いつも以上に、ゴム弓・素引き・巻き藁などのウォーミングアップを丹念にこなしてから、練習に取り掛かる。

なんせ、夏休みには全国大会が控えている。おちおちとはしていられない。
とはいえ、全国大会は当然の事ながら、全ての学生が出場出来るわけではない。その選抜をかけて、GW明けの前期に地区大会がある。そこで好成績を収めた大学に出場権が与えられるのだが、大学の多いこの地域では層が厚く、結弦を大前として筆頭にAチームで臨んだが、続く二人が相次いでこけた。半分け(ハワケ)、四の一(シノイチ)では、どんなに大前と大将でカバーしようと、話にならない。

なんせ全国大会に出るような強豪チームは、どの選手も皆中(カイチュウ)を出して当たり前のような強者ばかりだ。
昨年、夏休みに訪れる弓道合宿場の道場の机に、消し忘れたのか走り書きされた立のメモに記された内容は凄かった。その立のほとんどの選手が20射中19~20本の中り(アタリ)! 皆中に近いのだ。
ゆえに、100射でも個々が90射以上の中りを出すくらいの安定性と精神力がなければ、なかなか全国レベルには通用しないのかもしれない。

だから、この地区大会でも、当然全国に行こうという強豪チームは、どの選手も秀でていた。
もちろん、通常の立練習とは異なり試合ではプレッシャーはあるものの、皆がそこそこの中りを出さなければ出場枠に引っかかるのは難しい。いや、試合だからこそ通常以上の力を発揮するくらいでないといけないのだ。
ゆえに、出場枠まで後一歩、二歩というところで敗退してしまい、今年も団体戦の出場権は得られなかった。

とはいえ、個人戦では好成績を上げた結弦と、副主将でもあり同輩の唐澤が、その全国大会へと駒を進めた。だから、結弦個人としては、その全国大会に出るのである。
夏休みも何もへったくれもない。自分には、秋のリーグ戦までに一番の大きい山が待っている。
試験で鈍った感覚を取り戻すためにも、差し迫った大会に向けても、今から猛練習あるのみだ。

だから、今日は講義が終わり次第道場に足を運び、みっちりと練習をこなしては、ようやくの事一休憩しようと、持参した1Lの麦茶パック片手に、道場沿いの通りへと出てきた。
一応、道場及びその周りの野外も神聖な場として、礼節を払って、そこでの飲食は禁じている。ゆえに、休憩はフェンスの外のこの通りでする事と、決まっているのである。

それにしても、すっかり汗だくとなった胴着が肌に貼り付いている。
弓道場は建物とはいえ、半面オープンとなるシャッター式の半屋外施設。矢道も室内の完全施設でない限り、普通はどこもこんな造りだ。
ゆえに風通しはあっても、冷房も何も出来ないそこは、何ら外と変わらない。もしかすると、人がいる分、よりうだるように熱い。
更に言えば、袴も濃紺で熱の吸収が良く、丈も長い。汗だくになるのは必至! 夏の練習は、常にこの暑さと、半屋外ゆえに蚊との戦いだ。

結弦が直接パックの注ぎ口に口を寄せて、その麦茶を一口含んだところ、忌々しい事にそのストリートを向こうの方から、アーチェリー用具一式を入れたデカデカとしたスポーツバックを肩から吊り下げた悠誠がやってくる。
お互いに無視を決め込んでいたら良いものを、悠誠が人の汗だくとなった胴着姿を見て、何か物言いたげな視線を送ってくる。
だから、こちらとしても、必要以上に神経を尖らせる。
そんなむっとした表情が、悠誠の癇に障ったのか、向こうも表情を硬化させる。

「もう休憩かよ」
悠誠は通り過ごし様、挨拶もなしに、突如として嫌味のような文句を吐いてくる。
「こっちは既に、かれこれ1時間の上、練習している。そろそろ水分補給しなければ、熱中症にでもかかるだろ?」
売り言葉に買い言葉! 結弦も、元来の気性は荒いのかもしれない。顔を合わす度に、買わなくとも良いものを買っては、何かとお互い突っかかり合っている。

「大体、無駄に長く練習しても、仕方がないだろ? 集中力つけろよ」
確かにアーチェリー部の面々の練習時間は、全体的に弓道部員のものより短めなような気がする。夏休みでも半日やっていても、1日やっている者はそう見ない。
けれども、同じ弓とはいえ、元々の競技自体のタイプが異なる。
アーチェリーは照準付の弓で得点を競う競技であるに対して、弓道は中り外れの数を競う。しかも、試合とは別に、作法や射形(シャケイ)に重点を置く競技でもある。
要は集中力の要るアーチェリーと、他の要素も含む弓道とじゃ、練習時間が異なってきても当然だ。

「無駄に長くではなく、じっくりだ! 弓道は勝つだけでは駄目なんだ。真髄に外れる。中て射(アテシャ)に走るんじゃなくて、ちゃんとした美しい射形があってこその中りでなければならないんだ! ゆえに日々精進! 鍛錬を重ねているんだ」
「何が”中て射に走っては・・・”だ! そもそも弓道なんて、狙ったところに矢がいかない曖昧競技だろ? 中り外れのだけの勝負しているお前らに、駆け引きがあるのか?」

宣戦布告とも取れるこの台詞に、結弦の闘志に火が付く。
「その良さが分からんお前に、言われたかないっ!!」
「何が言われたかないだっっ」
「そうだろ? 完全じゃないからこそ、精神の鍛錬が出来るんだろ? そこが和武道の良さだ!」
「分からん!!」

結弦は悠誠の返しに、”なっ!”と怒りを募らせ、そのために一拍あける。けれども、その後、怒涛の快進撃を見せる。
「それに試合も単純明快のシンプルさだが、まずは先手を切る者はチームの気を盛り上げるためにも中てなければならないし、相手のチームが沢山中ててきたらプレッシャーだった生じる。常に交互に順番勝負する俺達だって、相当な精神力は要る!! それに・・・。中て矢ではないが・・・、俺は継ぎ矢(ツギヤ)にならないよう、数センチ横にずらして射る事も出来るっっ」

すると、血気盛んに応戦する結弦に、突如として悠誠が素直に認めるような言葉を返す。
「そりゃまぁ、そうだな。認める」
この男は狂犬のように突っかかってくるかと思えば、突然手のひらを返したようにこんな素直さを見せる。その度に結弦は拍子抜けし、調子を狂わせる。
なっ、何なんだ・・・。

二人の間のまったりとした微妙な空気が異様に面映ゆく感じられ、すっかり怒気も削がれた結弦は、ただただ居心地悪く困り果てる。
それは悠誠もそうなのか、あの血気盛んな様子は何だったのかという程、あっさりと練習場に消えていくのが常だった。

   * * *




補足余談は「続き読む」をクリックにて。

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団体戦は、1大学につき男女各2チームくらい参加権が与えられていたと思います。確か男子は4人立、女子は3人立だったと・・・。←既にあやふやな私
やはり上へと駒を進めるのは、その地区の1部リーグの大学チームでした。
そして、1部リーグを守りぬいているような大学こそ礼儀などにも本当に厳しくて、もろ“体育会”な雰囲気を匂わしていました。
試合の後って、大体1年・2年で、反省会なるものをするんですけど、そういう大学はそれも凄い! 1m間隔で大きな円になって、応援団の“押す!”のポーズでしてるんですけど、すごい怒声張り上げてやってます。
ちなみに何で1・2年かと言いますと、1年は大会お手伝いで、矢抜きや的立てなど、順番でするんです。どれだけきびきび動けたかが重要でして・・・。他大学に対して恥となったり、試合に出てる先輩に余分な負担になってはいけないので、そそうがあると怒叱られます。
私が1年の頃、一度今日の1年の動きは目に余ったとかで、3年の先輩がお叱りに出て来た事がありまして、2年の先輩に“上の先輩にまで叱られるって事は、余程だよ!!怒!!!”とかなり絞られた事がありました。家の場合はホームの時やアウェイでも施設内で出来るところは大概正坐だったので、足が大変な事になりましたよっっ。笑 もちろん痺れようが崩しなしです! 笑

そして、アーチェリーについて。そもそもあまり知らないので、いろいろ間違った事を言っていると思います。鵜呑みにしないで下さいね!
照準付きと書きましたが、多分それはオプションです! 隣のアーチェリー部の弓には付けてありました。

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
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