30.宝珠の夢

泉希の言葉に、一堂が目を瞠る。
肝心要の夢の住人に伝える“手段”!!
それが抜け落ちていた事に、明るみかけた目の前がまた闇に閉ざされてしまったかのような気分となる。

けれども、三人寄れば文殊の知恵! しかも、今は三人ではなく四人。それに、その内の一人はこちらの世界でも聡明で賢者的存在の富岡の兄だ。
皆で寄って考えれば、この難しい問題も何とか解けるかもしれない。
しばしの間、皆で頭を捻って考える。

だが、思いの外! 糸口となるような意見が飛び出したのは、問題提起した張本人! 泉希自身だった。
「あの・・・。余りにも馬鹿らしい意見で言い辛いんですけど・・・」
「何? 何でも良いから、君の意見を言ってみて。皆も聞きたいと筈だろうから」
富岡の兄に背中を押され、泉希は躊躇しながらも自らの考えを述べ始める。

「昔から、初夢で“一富士、二鷹、三なすび”を見ると、その年の縁起が良いっていう言い伝えのようなものがありますよね? それで、それを見れるように、大晦日の夜、枕元にそれらが描かれた絵を忍ばすと良いって・・・・。これと同じで、あの世界は夢の中の事だから、枕元にそのキーワードなり、写真なりを置いて眠りにつけば、夢の世界の自分達に伝えられるんじゃないかなって、思ったんですけど・・・。馬鹿げてますよね?」

消極的に締めくくる泉希に対し、一堂ははっとした表情を浮かべたり、更にう~んと頭を捻って唸ったりと忙しい。
けれども、いくら頭を捻って考えようと、答えは出ない。大体からして、やってみなければ分からない事なんだから、してみるより他ないのだ。
それが良いか悪いかは、してみて初めて判断出来る事だった。
だから、そこで茉莉緒が口を開き、建設的な意見を述べる。

「馬鹿げてるって事も、ないんじゃないか? そもそもカトリーヌ自身、俺達の名前にこんなダジャレのようなキーワードを託したくらいだから、存外に遊び心を持った人物だったんじゃないか? だから、あながちいけるんじゃないか? その一富士とかいうの!!!」
「まぁ、やってみる価値はあるな」
続いて高波もそれに同意を示す。そして、そう語る高波の表情に、夢の中のイセリーニエの面影がかぶる。

今まで年下で借りてきた猫のように大人しくしていた高波だったが、ここにきて高波が本来持っている主軸を司るような振る舞いが表立つ。
これは何気ないほんの短い一言だったが、それで富岡の兄に代わってその場をまとめあげる。高波の言葉には、どこか皆を従わせるようなカリスマ的な何かがあるようだ。
だからか、高波が垣間見せた素の姿が、普段良く知るイセリーニエそのものに思えたのだった。

そして、誰も泉希の案に異論する者はなく、満場一致で今晩、取りあえずのところその算段で実践してみる事となったのである。
それぞれ思い思いにどうするかを取り交わし、一応こうと決まった。
富岡の兄が“宝珠を抱く龍”の絵と、それこそ方角も指示された“四神図”を。茉莉緒が“ジャスミン”、泉希が“泉”で、そのそれぞれの写真と共に文字を。そして、一番曖昧な情報で伝えにくい高波に至っては、これも一か八かでキーとなる言葉を短い単語にして、それを記したメモを枕元に忍ばせる事となった。

「カトリーヌのためにも、俺達自身のためにも、やれることを尽くして、いざ! 夢を終わらせるぞ!!」

4人は手を重ね合わせ、そう誓い合う。
そして、思いの外長くはなったものの、充実した結論となったこの話し合いに終止符を打った。
4人がマクドナルードを出ると、夏とはいえさすがに日がすっかり落ち、辺りはもう真っ暗になっていた。
年長者の二人が泉希達を最寄駅まで送り届けると、軽い別れの挨拶を交わし別れる。富岡の兄は、いやよいやよと言いながらも茉莉緒と仲が良いようで、これから一緒に夕飯でも食べに行くのか、共に同じ方へと去っていくのだった。

残った泉希達は互いに顔を見合わせ、可笑しそうに微笑み合う。けれども、すぐに高波の一言でその和んだ雰囲気が一変する。
「あの、相羽さん? 家まで送っていきますよ」
一見どうって事のない文句だが、それは残された泉希に高波が気を遣ってというより、むしろどこか意地の悪そうなニュアンスが含まれている。
内に秘めたるものは強い泉希! もともと妙な女扱いをされるのは解せず、学校でも自分に気を遣ってくるクラスメート達を良しとしない。だが、今はそんな女扱いよりも何よりも、その照れ隠しのようなからかい口調がイセリーニエを彷彿とさせ、ついとそれにつられ、かっとなる。
だから、途端によそよそしさが抜けた泉希も、ミュルゼンさながら表情をむっとさせる。

「えっ、高波!! そんな、心配されなくても、大丈夫だから!!」
見た目はどうにせよ、自分はこれでもれっきとした“男”なのだと、虚勢を張る。なのに、高波は加えて、それを鼻で笑うような表情をわざとらしく浮かべる。
「心配されなくても? そんな事言って、襲われても知らないですよ。宝聖の隠れアイドルなんですから!!」
「!!!」
どこまでも意地悪い。
日頃は穏やかで大人しいと思われがちな泉希だったが、さすがにこの高波の台詞にはカチンときては、対抗する言葉も出てこない。

高波はイセリーニエだと知れた事で開き直り、泉希にはこのちょっと意地の悪い本性を顕わにする事にしたようだ。
突然の変化に戸惑い憤怒する泉希をよそに、高波は泉希の合宿のためにお泊り荷物で一杯のスポーツバックを奪い取ると、何事もなかったかのように「で、何駅ですか?」とスタスタと先に改札口へと歩いていく。

「もう!!!」
泉希は文句を言いながらも、慌ててその後を追うのだった。
こちらの世界に於ける二人の関係も、事実が明るみになった事で、何かが変わり始める兆しとなったようだ。

   * * *




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けいったんさん

そんな恋成就方があるんですかっっ。
な~んて、ラブいっ!!
もう、それ聞いただけで、今日一日デレデレっとした気分で過ごせそうです!
ジュルジュル・・・。

今から、枕の結果を執筆致します~~っ。

そして、いつも訪問&読んでもらって、更にコメまで、ありがとうございます!
感謝、感謝です!

No title

初夢もそうですが、
小学生?中学生?時代でしたか、片思いの子が 枕の下に 色文字(緑だったか水色だったか)で 片思いの名前を書いたら 思いが通じるという話しを思い出しました。。。...( = =) トオイメ"。o 0

その結果が どうなったかは知らないけど(笑)

泉希たちの方は、夢を見て どんな結果が出るのでしょうね?
カトリーヌが 魔女か女王な~んて姿で 出たりして~♪
{[(-ェ-:)]}zzz""。o 0((【・:*:・Ψ(`∀´)Ψhehehe ・:*:・】))...byebye☆
プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


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