35.宝珠の夢

イセリーニエとマリオンの前に現れた女戦士は、二人も良く知る、かつてイセリーニエの生家で共に養成訓練を受けた仲間の一人、エミネールだった。
彼女は女性らしいしなやかで細身のその体を引き立てるような、胸元が大きく開いた色艶を感じさせるような衣装を纏っている。そんなところに、戦士とはいえ、着飾りたいという彼女の密やかな女心を垣間見る事が出来る。
しかも、腰まで垂れ下がった嫋やかな長い髪は、深い漆黒の色をしており、風に煽られるままに、木漏れ日射すその光を受けて艶やかなに棚引き、より際立ったその容貌を引き立てている。

だから、一見では見目麗しい華やかな一般女性であるのかと見間違がってしまう程で、とてもイセリーニエ達と共に厳しい訓練を受けてきたようには思えない。
けれども、やはりその隙のない身のこなしや、鋭い視線、そしてその引き締まった細身の体には一切の無駄な贅肉は見られない事からして、彼女が間違うことなき鍛え抜かれた戦士だという事が分かる。
また、そのエキゾチックでいて情熱的な口元が、実に如実に彼女の気性の強く激しい気質を物語らせている。

とはいえ、もう一人遣わせられた刺客の男とは、明らかにタイプが異なる。

それは、彼女が破壊力や瞬発力を活かした体力系の技に出るタイプではなく、それと異なるスタイルの技を得意としているからであろう。
もう一人の男は見た目からも前者を地で行くタイプの者だ。遣わされたのは2人とはいえ、バランスも良い。
そして、そうだから女がてらにイセリーニエの兄に高く買われ、部下を従えてのこの早期イセリーニエ討伐の全権を託し任されたのだろう。

兎に角、かつての仲間との対決は免れないようだ。

そしてこんな時、思慮深いイセリーニエとは異なり、コミュニケーション能力に秀でるマリオンが、そのタレントを発揮し先に口を開く。
「これは誰かと思えば、エミネールじゃないか?」
「イセリーニエにマリオン! 久方ぶりだわね! 少し老けたくらいで、ちっとも変わらないみたいだけど、お頭の方は幾ばかりか利口になったのかしら? 特にマリオン!」
「エミネール! お前自身も、ちっとも変わらぬキツさ加減だな?」
「お誉めにあずかり、光栄至極! でも、私を目の前にして、そうそう悠長にしていられるかしら?」
「なるほど! おっしゃる通りその顔は、どうも昔を共に親しく懐かしみましょうってものでは無さそうだな?」

マリオンはあはっと苦笑いを浮かべ、そう括る。
イセリーニエもマリオンも、エミネールが姿を現した時点で、どういう事かは重々分かっている。そもそもエミネールの今の身の置きどころ自体、良く心得ているのだから、穏便には済まされる筈がないのだ。
そう! 片やイセリーニエの実兄アシュリーニエによって追われる身と成り果てているなら、彼女はのその忠実な犬であるのだった。

イセリーニエとマリオン。そして、エミネールとは、全くの相反する立場となっての再会なのだった。

「マリオン? 本当にあんたは、相変わらずの馬鹿馬鹿しい男ね! その掴みどころのない能天気さにはヘドが出るわ!!」
「こりゃまた、嫌われた事で・・・」
「嫌われたとしても、屁とも思っていない癖に、良く言うわね! まずはその減らず口のあんたから、始末してあげましょうかね!!」
その捨て台詞と共に臨戦態勢に入ったエミネールの表情に鋭さが増す。

けれども、そうなってもまだマリオンは、へらへらとしたふざけた笑みを浮かべ、「ご指名受けっちゃったよ」などと大仰にぼやいて、軽くを受け流す。
それでエミネールの闘争本能が削がれるわけではない。けれども、エミネールに待ったを掛けるには十分だ。
掴みどころのないマリオンとて、かつての仲間と闘うにはそれなりの心の準備も必要だ。これが避けられぬ闘いとはいえ、そんなに先を急ぐ必要もないのだから、言葉の端ではぐらかしながらも、覚悟を決めるまでの僅かな時間を稼ぎたいというところだった。
もちろん、それは自分だけでなく、イセリーニエにもなるべくその時間を与えてあげようという、マリオンなりの気遣いの現れでもあった。

「けど、エミネール? 俺達4人のところに、併せてたった2人で乗り込んで来るとは、俺達も軽く見られたものだな?」
エミネールは、そんな痛いところを付くマリオンに悟られないよう、こそりと舌打ちする。

世界広しといえど、イセリーニエ達と対等に戦えるような人材は稀有だ。エミネールの他に、使えるレベルにあったのは、今タカラッシュと対峙しているあの男戦士一人くらいだ。
しかも、彼は危険な橋と分かっていて、このイセリーニエ討伐に志願してきたのだ。他では馬鹿なヤツだとか、出世欲があるんだろうとか、いろんな揶揄的憶測が飛びかっていたが、実のところはひとえにエミネールを慕っての事だった。
とはいえ、どんな理由にせよ、こんな殊勝な者は他にいない。それ程にイセリーニエ討伐は分に合わない仕事だからだ。
とはいえ、マリオンの指摘通り! エミネールとしても、この任務は今までにない一杯一杯の瀬戸際状態。数からいったも、力量からいっても、全く足りっていないのだ。

けれども、ここ最近ずっとイセリーニエ達に貼り付き、その動向を窺っていたら、このミッションを遂行するためには、今しかないというのも十分に感じられた。
標的は4人いても、その内の一人の導師はアシュリーニエ様に力を封じられ、全く役にも立たないどころか、足手纏いとなる事受け合いだった。だから、イセリーニエはそれに手一杯となると予想され、実質はこのマリオンと賢者の二人との闘いになる事が予測出来た。
ゆえに、自分がマリオンと一対一が取れるのは今しかなく、イセリーニエの勢力を削ぎ落すには絶好の機会だった。

しかも、賢者と共に連れた男の力は均衡、もしくは勝算ありといった具合で、上手くいけば賢者とマリオンを始末した後、二人掛かりでイセリーニエ、そして導師と殺る事が出来るかもしれなかった。
だから、この機を選んだエミネールには、数は少なくとも十分な勝算あっての事だった。
それに、何より愛するイセリーニエの兄アシュリーニエ様のためにも、ここで自らがイセリーニエを食い止めておきたい一心だった。
けれども、実のところ、マリオンと自分の力も均衡している。本当に殺れるかは定かでない。だからこそ、心に固く誓う。

この命を懸けて、何が何でもここで仕留めさせてもらう!!




女戦士の名付けですが、敵→エネミー→エネミール→エミネールです。

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けいったんさん

こんにちは! そうなんですよ! ついに戦闘シーンに突入になるんですよ!!
しかも、2回は戦闘シーンが続きそうです。←いつもの事に、今から書くんですけどねっっ。笑
でも、展開を練っている時に個々の特性を考えるのは意外に面白かったので、よかったら個々の得意技にでも注目してやって下さい! 笑
そして、うちはハッピーエンドなので、ふふふ。『水〇黄〇』や、スー〇ー戦隊、プ〇キュアくらい安心して読んで下さいね。笑
そして、その後はまったり現代に戻ろうと思ってます! 笑

> こんなマヌケな読者ですが、これからも宜しくね♪(*・ω・)*_ _))ペコリン...byebye☆
いえいえ、こちらこそよろしくお願いします!! いつも訪問&コメを頂いて、嬉しい限りです!!

No title

とうとう戦闘シーンに突入ですか!?
イセリーニエの兄のアシュリーニエって 自分の弟に刺客を向けるなんて ほんと酷い奴ですね~ヾ(・`д´・)ノ

でも まだ こちらの方が、ミュルゼンとタカラッシュよりは、イセリーニエとマリオンだから いくら エミネールが強くても どうにかなると思っちゃうんだけど これって”希望的予測”かしら?

ミュルゼンとタカラッシュの方に イセリーニエとマリオンが助けに行けないなら 2人は どうなっちゃうの!アタフタ((ヽ(;´Д`)ノ))アタフタ

ばけもぐ様、私ったら 前回の34話を更新されたのを気づかなくて。
今日の35話を読んでいて 「なんか変だ(´σ `)?」と、それで 気づいたのぉ~~Σ(゚д゚;)ガーン
こんなマヌケな読者ですが、これからも宜しくね♪(*・ω・)*_ _))ペコリン...byebye☆
プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


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