42.宝珠の夢

昨日の夢でミュルゼンがイセリーニエに対して思いも依らぬ大胆な行動を取ったが、それで至極困ったのは朝目覚めた泉希だ。
あのキスがミュルゼンのした事とはいえ、ミュルゼンであってもそれは泉希自身のようなものだからこそ、夢で自らしでかした事に至極焦っては困り果てる。

何て事するんだ・・・・。高波に合わす顔がないじゃないか・・・。

ぼやいても仕方がない事とはいえ、ぼやかずにはいられない。
しかも、劇の練習も佳境なら、今日は富岡の兄や茉莉緒と落ち合う予定にもなっており、嫌でもその高波と顔を合わす事となるのだから、その焦りはより並々ならないのはいわずがもなだ。
だから、泉希は困り果てるとともに、諦めのため息を深々と吐き出し、覚悟を決めて家を経つ。

そう、泉希達4人はこの現実の世界でも偶然巡り逢わせてからというもの、場所や時間はまちまちではあるが、定期的に意見交流の場を設け、落ち合っている。
大概は週末など学生である泉希達の身の自由が効く曜日に設ける事が多いものの、積極的に意見を交わした方が良いと思われた場合についても、その都度必要に合わせ、時間や場所をやりくりし会う事にしている。

そして、今日は週末だからというので、取りあえずのところ組まれた予定だったのだが、まさかのまさか! 昨日のあんな後の最悪最低のタイミングになってしまおうとは、思いも依らなかった。
昨晩の夢の仲での出来事に対し、各々全てへの突っ込みどころも多い事だろうが、何よりも! 高波の目が一番気になるところだ。
だから、そうした中で交流会を行うのに、非常に億劫な気分とならざるを得ない。

泉希達は休日登校し、文化祭劇メンバーでの通し舞台稽古する。そして、それを何とかやり終えると、高波と共に、土日でも出勤の富岡の兄に合わせ、その職場近くであり、以前話合いの場にも使った事があるマクドナルードへと向かう。

けれども、二人きりとなった今も、当然同じ夢を見ていた筈の高波の口から、昨日の出来事について触れるような事は一言も出てこない。
何を考えているのか、こちらの世界でも今一つ分かりにくい高波だから、昨日のあれについてもどういうつもりで黙っていてくれているのか、定かでない。
とはいえ、正直なところ、このままずっと触れずに済ませてくれるなら、一番望ましい事であり、有難い話だ。
そんな風に思いながら、泉希はマクドナルードへの道のりをてくてくと歩いていく。

けれども、安堵した途端! そんな泉希の心を見透かしたように、高波は突然意地悪そうな顔つきとなり、ここぞとばかりに掘り返し衝いてくる。
「相羽さんって、思いの外大胆な人だったんですね! まさかあんな事してくれるとは思ってもみなかったです! 実益以上に結構なものを頂きました!!」
「・・・・」

痛いところを余すところなく突かれ、口ごもる。
幾ばかりかの心づもりはしていたものの、実際切り出されてしまうと、言い返したくともそれに見合う言葉が全く見当たらない。ただ、あわあわと焦る他ない。

「あれは、相羽さんの“素の姿“の現れだと、思っても良いんですかね?」
「しっ、知らない!!」
泉希はぶっきら棒にそう言うのが精一杯! だから、突如として足早に歩き出す。
だって、ここには助け舟もないのだから。

けれども、高波の足は思いの外早い。
自分よりも長身なのだから、それに見合って歩幅もそれなりのものであるわけであるから、速度を上げた自分にピッタリと付いてきても、当然と言えば当然の事なのだけれども、その辺りが至極悔しい。
とはいえ、振り払おうと思うだけ、無駄な事なのかもしれない。

「ちょっと待ってくださいよ! その態度、図星だと思っても良いんですかっ!!」
「だからっ!! 知らな~~いっっ」
耳の後ろまで真っ赤にして、それでも高波を振り払うように必死に歩いていく。だから、マクドナルードまで来たというのに、危うくその前を通り過ぎそうになる。

「おいおい! お前ら痴話喧嘩か? こっちでも、仲良いんだな!」
高波に輪を掛けたお調子男! 茉莉緒は、このマクドナルードに一番乗りし、前を通りかかった二人を見て、ここぞとばかりにからかい口調で呼び止めたのだった。
ある意味第三者の登場は“助け舟”なのだが、その“助け舟”となりきれないのが、痛いところだ。
「・・・・」
だから、泉希は絶句するしかない。

けれども、水を差されたに等しい高波も、そうした不本意な思いから、泉希に気付かれぬ程度にこっそりと舌打ちする。
ゆえに、存外に高波もしたたかな面を持ち合わせた主のようだが・・・、知らぬが仏! 出来ればずっと、それに気付かないでいるのに越した事がないのかもしれない。

「お前ら、揃いも揃って、そんな顔するな! これでも有難き“褒め言葉”なんだぜ!」
“どこが!!”と喉から出かかったものの、寸でのところで思い留まる。何と言っても、こちらの世界ではこんな人でも目上の人なのだ。そうそうはぞんざいな言葉など返せやしない。

「そういや、お前ら文化祭劇にヒーロー・ヒローウィン役で出るんだってな? そんな配役になってるとは知らなかったな! 宝さんが、言ってたぜ。でも、そうというなら俺もしかと見届けてやるからな! まぁ、せいぜいラブいところを見せつけてくれ!!」
いつも富岡の兄を“宝”と呼び捨てにしているのに、こんな時だけ“さん“付けしても、空空らしいが、何よりもその内容だ。
表情の読めない高波は兎も角として、すっかり泉希は困り果てたところ・・・。これこそ本当の救世主! 遅ればせながら、富岡の兄が登場する。

すると、途端に場の空気が引きしまり、そんな冗談めいたお遊び話も終了とならざるを得なくなる。
ああ、良かった・・・。もう、どうなるかと思ったよ・・・。
そして、その後4人は店に入り、一通りの情報交換意見交換をし、有意義な時間を過ごす事小一時間! すっかり辺りも薄暗くなり、解散となるのだった。
けれども、有難いやら、迷惑やら・・・。劇に見に来てくれる約束を富岡の兄からもしかと頂き、密かに困ってしまう泉希だった。

とはいえ、昨日の今日! 微妙な変化があったのは自分達だけじゃない。
今日の富岡の兄と茉莉緒も一見してはいつもと変わぬようではあるものの、富岡の兄のいつものツンケンさが影を潜まり、始終柔らかな様子で、二人がどことなく近しき雰囲気になったように感じられた。
しかも、泉希達と別れた後、またしても二人でどこかへと行く様子に、より一層そういったものを感じさせらる。

けれども、泉希達だって・・・。

まだ一線も二線も画する関係とはいえ、二人の距離は徐々に近づいてきている気がしてならない。
だから、いつの日か先輩後輩の枠を超えた仲睦まじい関係へと発展していく事も、遠からずあるのかもしれないと思える二人だった。

   * * *




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けいったんさん

突然の勝手で申し訳ないですが、こちら↓にリコメントさせて頂きました。すみません
http://bakemogu.blog112.fc2.com/blog-entry-604.html

No title

夢の世界と現実の世界は、別モノ!とは言いきれないのが 人の感情

数年前 今まで 何とも思ってなかった芸能人と ラブな恋人同士の夢をみてから ファンになった経験ありなんですぅ~私!d(* ̄ω ̄*) ポッ

宝と茉莉緒、泉希と高波の現実での距離が縮まれば 夢の世界に反映されて いいんじゃな~いの♪
ZZzz(_ _*).。o0O○《チュッ( *^・^)("▽"*)キャッ》...byebye☆
プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
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