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51.宝珠の夢

如何ばかりか闇かと思える程昏く閉塞的な思いに苛まれていたタカラッシュは、ふとある事に思い当たる。

自分の愛した男は、こんな簡単にもろくも崩れ去る程、弱かったのだろうかと・・・。

自分が知る限り、彼にそんな脆さを感じた例はない。
マリオンという男は、“殺しても死なない!” そういった類の男だ。
いつも飄々としていて、掴みどころがなく、そんな軟派さに“良し”と気を抜かしていたならば、いつの間にかに忍び寄られては、寝首をバッサリと取られかねない。そんな得体の知れぬ強さを秘めている男だ。

けれども、その強さも、自分の前だから見せるのものなのだろうか?

いや、違う! 基本的に、自分とマリオンでは、その精神における在り方自体に相違がある。
だから、タカラッシュが無理だと思った事も、彼ならいとも簡単に通り抜けていく。ともすれば、自分がさほど気にも留めないような事柄に対し、実に細やかな一面を見せる事がある。
全く異なる人間なのだ!
そして、今は・・・。

マリオンが、これ如き事に屈する訳がない!!!

それに、自分は自らが思っているよりも、あの男を愛しているのだ。そんな自分がそうだと信じないで、どうするというのだ!
これは自分が捉われている疑念が見せた幻覚に過ぎない!
偽りであって、真実ではないのだ!

マリオンは・・・。砂屑となって消え去ってはいないのだ!

そうだ、そう思うのだ! マリオンを信じるのだ!
それが全て! それで良い・・・。

すると、マリオンが砂屑となって消し去った辺りに、黒い粒子が蟠って集まり始める。そして、それ次第に人型を取り始める。更には、色が付き、表情が現れ、次第に鮮明となったマリオンの姿が現れる。
タカラッシュは2、3度目を瞬かせ、凝らし見る。

紛れもなく自分が愛する男の姿だった。

ああ、自分を置いて、どこか彼方へと消し去ってはいなかった・・・。
自分の薄弱と下意志が見せた幻覚(ユメ)! マリオンはちゃんと幻覚の外(現実)では、生きている・・・。
縋るものが砂と消え、未だ伸ばされたままとなっていたタカラッシュの手を、その人型がしっかりと掴み取る。
その温もりに、確かな感触に、それがまぎれもなく血の通った存在である事を確信する。

「タカラッシュ? タカラッシュ? ・・・」
自分を呼ぶ声がする。タカラッシュは心して、その方へと意識を集中させる。
「タカラッシュ! タカラッシュ! タカラッシュ! ・・・」
その声は、この幻覚の世界から自分を呼び覚ますかのように、次第にはっきりとした大きなものになっていく。

そして、立ちこめた靄(モヤ)が晴れ、本当の世界が姿を現す。

果たして、ここはどこであったか?
ああ、図書館だ!
マリオンと共に入った図書館の地下にある書庫の一室だ!!!
やや湿気を帯びたような、独特のきな臭い書物の香が、タカラッシュの鼻腔を掠める。

はっきり覚醒した目で自分の周囲を窺えば、傍らには息を潜めたマリオンが自分の顔を見つめている。
まさしく彼こそが、正真正銘! 本物のマリオンだ。
徐に手を伸ばし、その頬を撫でる。それは慣れ親しだマリオンの肌の感触だ。

「ああ、自ら戻ってこれたか・・・・・」
幻想に捉われしタカラッシュの苦悩に思いを馳せ、さも自分が被ったかのように、マリオンは眉間に深い皺を刻ませる。その歪んだ表情は、“苦しそうだったな? でも、信じていたぞ“とでも物言わんとするかのようだ。
どんな労いの言葉より、タカラッシュの心に響いて打つ。

そして、これこそ自らが“生ける証”だ!

だが、自分はどれ程の間、その幻覚の世界に捉われていたのだろうか?
僅かな間であったようにも思えるが、自分にはとても長い時間であったように感じる。
そして、そんな短い時間で、骨の髄まで蝕まれてしまおうとしていたというのだから、精神を操る術というものは怖いものだ。
現実世界に生還出来た事に、一先ずその胸を撫で下ろす。

そして、そんなタカラッシュに、マリオンは気になるところ“敵の姿”を、続いて指し示す。

「あの男も・・・、もう少しのようだ・・・・・・」
タカラッシュを襲ったアシュリーニエの使徒は、自らの技である“幻覚”の世界に陥り、苦しんでいる。
この男も技を掛ける前に、マリオンの模倣の術にかかってしまったのだろう。

けれども、仕方がない! これは自分達が生きる術だ。

それに、マリオンは苦渋の決断として、タカラッシュを守るため、目指す我が使命のために、自分達の目の前に立ちはだかる男の術を施したのだ。
マリオンはこの世界に生を受けてから、今までどれだけの者を殺めてきたか分からないが、この哀愁に満ちた薄紫の瞳からは、決して好き好んでその道を選択してきた訳でない事が容易に分かる。
ここはきれい事だけでは生きていけぬ世界なのだ。

そして、自分達に向かってきた男は、今幻覚の世界に捉われ、焦点も定まっていなければ、目をぎょろりと剥き出し、取り乱している。何もない彼方に向かい、必死に何事かを喚き散らしている。
だが、大量の泡を口から吹き出し、もごもごと口を動かしているだけで、果たして彼が何を言っているかは、はっきりと聞き取る事が出来ない。
それでも、時折“アシュリーニエ様”と主の名を叫び呼ぶ。その悲痛な声が、耳にこびり付く。
男の核を成していた事柄は何だったか?
彼の内を見る事は出来ないのだから、それを計り知る事は出来ないが、おそらくアシュリーニエの忠実な下部である彼の大切としているところは、“主の信頼”なのかもしれない。

この男の場合、とうに心が幻覚に浸食され、完全に蝕まれてしまっている。既に発狂が始まっている。
だから、後如何ばかりも持ちはしないだろう。儚い事だ!
そう心に思った端から、男は身体を発光させると、その魂を昇華させる。
ここでも憐憫とした魂の死に柱が、天井を突き破り高々と彼方に向かって立ち上っていく。さながら哀悼歌の調べを奏でているかのようだ。
この煌めく光は、その様とは裏腹に、只々美しい。もはやその消えゆく光には、何の罪はない。

けれども、もし自分達に出来る事があるとすれば、この男の死を無駄にはしない事だ。

その死と引き換えに、かならずやこの世界の終焉を導く事こそ、自分達に残された道だ。
だから、その感傷にいつまでも浸っている暇はない。
全う(マットウ)するためには、遣るべき事がある。マリオンは表情を引き締めると、タカラッシュの肩を押し促す。

「まだ敵が現れるかもしれない! なるべく早く、ここの目ぼしい書物を洗おう!!」

   * * *




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テーマ : 自作BL連載小説
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傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
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