52.宝珠の夢

こちらは他の作品とは毛色の異なる、BL風味のファンタジー作品となっています!
ご注意下さい!

再びミュルゼンサイドです! この闘いですが、終着まであと僅かです!
 ↓↓↓
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イセリーニエの目の前で、アシュリーニエは2度大きく吐血させると、その場に崩れ落ちる。何とか堪えそうと、片膝を付いて蹲(ウズクマ)る様が痛々しい。
辺りには血独特の生臭い香りが漂い、少し離れたところに居るミュルゼンの鼻腔をも掠めていく。
だから、返り血を浴びた本人ではないというのに、ミュルゼンの口腔内には鉄味を帯びた血の味が広がっているようなに思えて、仕方がない。

ゼイゼイと胸を大きく上下させ、絶え絶えの息をするアシュリーニエの傷口からは、未だに留まる事のない夥しい量の血が、次から次へと流れ出し、纏った服を真っ赤に染めている。
人の死は実に身近にある世界ではあるとはいえ、その有様を幾度となく目にしても、受ける感覚は決して麻痺し鈍る事はない。いつでも、甚だ恐ろしいばかりだ。
しかも、イセリーニエとって、アシュリーニエは血を分けた唯一の兄だ。その兄を自らの手によって死に追いやろうとしているのだから、尚更の事であろう?
表情を失い、震える自らの手の内を、只々見つめている。

「忌々しきは・・、その導師かな・・・。我の・・、行く末を・・、どこまでも・・・・、邪魔をする・・・・」
途切れ途切れに絞り出す声は、痛みにしわがれ、低く、蚊の鳴く音のように消え入る小さきものだ。
「いや、これは・・・。イセリーニエ、お前の大切なものに手をかけた事への・・・、然るべき“報い”・・、なのか・・・・?」
「兄様・・・・」

だが、ここではじめて、アシュリーニエの顔に笑みが浮かぶ。
甚だしい苦痛に苛まれているというのに、実に安らかな表情である。何かを悟った者だけが浮べるものなのかもしれない。

「イセリーニエ・・・。天は、お前達の味方をしているというのか・・・? それが“神の決断”というならば、その意思に報いて必ずやこの世を終わりへと導け! お前が進む先には・・、新しき見事な世が待っておるのだろうな・・・・・」
イセリーニエはアシュリーニエの手を強く握り取ると、深く誓う!
「あなたの死は・・・、無駄にはしない!!」
「ならば、我も・・・・。安心して・・・。我を待つエミネールの元へ・・・・・・」

最期の言葉と共に深く目を瞑ると、アシュリーニエは傷付き力を失った体を地表へとゆっくり倒せす。
そして、その身を覆うかのようにキラキラとした光が現れると、その煌めきと共にその魂は天高くへと昇っていく。
だが、その哀愁に満ちたその輝きに、イセリーニエの心は強い衝撃を受け、先程そのアシュリーニエに誓いを立てたものの、すぐには立ち直れないでいる。
呆然と、消えゆくその先を目で追っている。

下層では、ミュルゼンの癒しの気を浴びていなかった村人達も、アシュリーニエの消失により、その呪縛から解き放たれている。
すっかり正気を取り戻した彼らは、今まで狐にでも抓まれていたかのように、一様に不思議そうな表情を浮かべては、互いの顔を見合し何事かを語り合っている。

けれども、そんな住民達と忠実な下部だったアシュリーニエの側近達とは、違う!

彼らこそ、アシュリーニエに洗脳されていた者達なのではなく、元々志を同じくして集まった者達なのだった。
だから、ここへの闘いも自らの意思で従いついてきている。
けれども、アシュリーニエが滅した今、それに対する反応は様々だ。

自らを導く指導者を失い、戸惑い、イセリーニエ同様消えゆく煌めきを呆然と眺める者。
これが天の運命(サダメ)というならば、考えを改め、それに従うべきだと、許容を見せる者。
そして・・・。“アシュリーニエの仇を”と、一矢報いようと未だに挑みかかろうとする者だ。

だが、依然とイセリーニエは兄を失った哀しみに深く捉われている。自らの使命も半ば忘れて、その場に呆然と固まっている。
けれども、このアシュリーニエの死で、何を大事にすべきか?
その意思を逸早く受け取ったのは、イセリーニエではなく、ミュルゼンだった。

この死を決して無駄にしてはならない!
アシュリーニエも呟いていた。
・・・それが“神の決断”というならば、その意思に報いて必ずやこの世を終わりへと導け!と・・・。
ならば、その天の意思を全(マット)うして、必ずや報いてみせるべきだ! それが自分達の進む道だからだ!

自分こそ、この世を変えて見せる!!

ミュルゼンはその小さい胸の内に、強固な信念を抱く。
弱いばかりの自分ではない。失い、悩み、愛を知り・・・。一回りも二回りも、その心を強いものにしてきた。
イセリーニエを助け支える事も、導く事も、今の自分には出来る筈なのだ!

それでもイセリーニエは、何とかその場を納めようと、自らに向かってくる者の力を奪う。だが、力を奪えど、頑ななその意思までは解きほぐせない。
力失くしても、尚諦める事なく自らに飛び掛かってくる相手に、途方にくれる。
けれども、ミュルゼンの強くて安らかな気のベールが、イセリーニエの周りをも囲む。
慈愛に満ちたそれは、飛び掛からんとするその者の闘争心までも奪い、その闘いしか知らぬ心に安らぎを与えていく。

この世界で・・・。互いが争う必要など、本当は元よりないのだ!




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テーマ : ファンタジー小説
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ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
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