22.隣人

「だから、大和? 俺を選んで、戻ってきてくれ!! そうしてくれたら、コレをちゃんとお前に返すから!!」
「ハジ・・・メっ!!!」

「大和! だから、大和は無理に俺を愛さなくたって、良い。これが、唯一愛した男の思い出形見っていうのなら、それで良い! だから、これと共に俺のもとで、生きて行ってくれたら、それで良いんだ!!!」
「ハジ・・」

「だから、な? 俺のところに帰ってきてくれるか? 帰ってきてくれたら、返す! 必ず返す! 戻ってきてくれ、大和!!」
「!!!」

言わない事ないとばかりに、青ざめた大和に代わって高が、二人の間に割って入ってくる。

「アンタ! 仮にも大和(コイツ)に、惚れてるんだろ? 口先では“愛している”って言いつつ、コイツが大切にしていたと知っているソレを盾に取るのか? そもそも、ソレはコイツのものなんだろ? 返して然るべきだ! それに、コイツを・・、悲しませて良いのか?」

「アンタには、分からない! これに縋ってでも、自分の元に帰ってきて欲しいなんて、分からない! 卑怯だろうが、醜かろうが、俺は大和を愛している! 何としても、失いたくないんだ!!」

分からない? 分かりすぎる程、分かっている! 分かっているからこそ!!!
必死なのは、何も自分だけじゃない。
目の前の男も、そんな必死な男に変わりなかった。

だが、高には、この男のように大和を繋ぎ留めるような“切り札”もなければ、自分の本当の気持ちも、あの“対抗意識”というあの強力な壁がある以上、易々とは打ち明けられない。
色が変わる程きつく唇を噛み締める。

「分からない? そんな事、分かってるさっ! 俺には“切り札”なんてない。それに選ぶ権利も、“大和”にあって、俺にはない! 大和がお前を選ぶというなら、それは仕方が・・、ない・・・。だけどな? 盾にしているソレは、本来大和(コイツ)のものだ! “隠匿”となれば、警察に被害届だって出す事も出来る筈だ! それに頼ってないで、コイツの意思に委ねろ!」

そう発言した端から、苦渋が満ちてくる。
一見大和を援護したようで、高自身を弁護したようなものだが、元と自分は決して50/50(フィフティ・フィフティ)の立場になったワケではない。
元の持つ”切り札”は情状酌量として効力あるものであるに変わらないだろうし、なんせ自分と大和がそういう関係にあった期間は極々僅かで、遥か昔の事だ!
とても自分を選んでもらえるとは思えない。

ゆえに、大和の意志に委ねてしまう方が、高にとっては分が悪い事であるのに違いなかった。

けれども、最終的には、やはり選ぶ権利が大和にある! それが確かな事だからこそ、そう言わざるを得なかった。
それに・・・。
どちらにせよ、大和の心に住まう男には、自分もこの目の前の男も、逆立ちしたって敵いやしないのだ。

大和には・・・、とても愛してもらえそうにない・・・・。

胸の底から苦々しい唾が這い上がってくる。
だが、仕方がない! 恋愛は自分だけがするものではないのだ! 大和の心を自由に動かす事は出来ない。
だが、そんな高の思いとは異なるところで、元も大和もその発された言葉に深く捕らわれた。物思いに、それぞれのもとに沈黙が訪れる。

被害届・・・。
高は、これに何が入っているのか知らない。
これが高価な宝石や何かなら、それも手の一つだったかもしれないが・・・・・。そんな、警察が取り合ってくれるような、価値のある物なんかでない。

それに、当初はそれを何とかしてでも自分の手元に取り戻したいと思ったが、もう返ってこないというのなら、それはそれでも良いのかもしれない。
今ここで、高が自分の為に援護してくれた事の方が、大きいように思える。

高は“選択権は自分にある”と言ったけど、それを真に受け二人の内どちらかを選ぶとするならば・・・・・。
自分は、高といたい。
やはり・・。こんな元をどうしても愛してあげる事も出来なければ、自らの意思に背くのも辛い。

高といたい・・。

大和はようやくの事に、二人の間に口を割って入る。
「“警察に”って、言うけれど・・・。これは、そんな価値のある代物じゃないんだ!! でも、もう良い。返ってこなくとも、良いだ」

とはいえ、大切な品! それを失う事で感じる“喪失感”は、隠しようがない。
諦めにも似たそんな大和の哀しげな表情に、高は堪らない思いを抱く。

普段プライドの高い大和だ。余程の事でない限り、弱味など自分には見せない筈だ。
それが、今!! こんな弱さを露見させた顔など、見た事がない。
あの大和が、体裁を取り繕えないなんて・・・。
だからこそ、ソレがいかに大切なものか、ひしひしと伝わってくる。
垣間見た和の弱さに、その価値を知る。

これだけでも・・、取り戻してやらなければならないか・・・・。

「お前もこいつに本気で惚れているのなら・・・、悲しませるな・・・。“切り札”なんて言わずに、返してやれ!! 縋りたい気持ちは、俺だって分からなくもない! だけど、所詮コイツの心の中に住まう相手に敵わないっていうのなら、どうであれ同じ事だろ? 悲しませるだけ・・、損だ!」




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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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