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24.隣人

「ありがとう・・・。元・・・・・」
元はそれに答える代わりに、大和の手にその指輪ケースを手渡す。そっと包み込むように握らせてくれた元の掌は、温かかった。
思わずほっとして、大和は自ずとその悦びが表情に零れ出てしまう。

「ああ、堪らないな・・・・。もう、本当にダメなんだな・・・・」
「元・・・・?」
「でも、大丈夫! 俺も、男だ! 何とか立ち直ってみせるさ!!」
「はじ・・・」
「幸せになれよ!」

元は名残惜しそうに、大和の躰をぎゅっと抱きしめる。
だが、そうした事で、元の堪え切れない昂ぶった感情が溢れ出る。
「大和・・、大和・・・。愛してた! 愛してた・・・。だから・・、絶対に幸せに・・、なれよ・・・・」

大和の細肩に顔を埋めて叫ぶ元に、大和は抱き返して未練を掛けて良いものやらと、手持無沙汰に両手が彷徨う。
やはり元はこの叶わなかった自分の思いに、泣いているようだった。
いつまでも離し難いとばかりに、大和を抱く腕が震えている。

「・・ありがとう、元・・・・」
大和は元を断ち切るように、心して呟く。
同じ叶わぬ思いに焦がれる者同士、元の気持ちは痛い程分かる。けれども、同情だけで、生涯に渡わってその思いを受け留めていく事は出来ない。
元に高の影を重ねて、偽りの愛を見てあげるだけなんて、空しいばかりだ。

そうと思ったらもう、元に情け容赦を掛けるべきではない!
そんな事をすれば、失恋の傷を深めるだけにしかならない。

自分は元を突き放さなければならない。

だが、果たして、元がエールを送ってくれたように、自分が晴れて本心から高と結ばれる日が来るのかどうかは、分からない。
幸せになれるか・・・・。分からない。

いや、いつまで高と共にこの惰性とも思える生活を、送くっていけるかも分からない。
ただ、自分は二度と元のところへ戻る事はないのだけは、分かる。
元には新たな人生を送って欲しい。
今まで自分を支え、自分を旅立たせてくれる元。それに感謝しているからこそ、思える元の幸せだ。

「ありがとう・・・」

もう一度、今までの感謝の念を込めて、元にその言葉を送る。
その一言を告げるので、精一杯だ。それ以外の気の利いた言葉は、思い浮かばない。
そして、その言葉を最後に、大和は元の身から離れ、立ち上がる。

だが、元はそれに対して、顔が涙に濡れているのか上げる事すら出来ないようだ。
いや、大和の顔を見れば、今し方した決心が揺らいで、別れられなくなってしまうとでもいうのかもしれない。
元は顔を伏せたまま、“グット・ラック”とばかりに手を上げ、大和に”さよなら”を告げる。

そうだ! これで自分達は二度と会うような事はない!

大和は切ない微笑を浮かべると、高と共にその場をそっと後にする。
今まである修羅場を通り抜けてきたものの、その中でも今回が一番辛く、後ろ髪引かれる別れだった。

これ程愛され、共に過ごした3年間。
埋まる事のない大和の心を、必死に支え続けてくれた元・・・。
たとえ高以外の男が住まう余地などこれっぽっちもなかったとはいえ、それでも少しくらい気移りするところはあったのだと思う。
愛してはやれなかったが、決して嫌いにはなれない・・・。

そして、ここにも・・・。大和に少なからぬ思いを密かに寄せる男がいる。

「それは・・・・・・。そんな・・、大切なものなのかよっ!!」
嬉しそうにほっとした表情で、手元の小ケースを大事そうに抱える大和の背に向かって、高が忌々しそうに呟く。
「・・・・・・」
だが、その本当の持ち主が、まさか自分の目の前に居るとは言えない。

「あいつが言っていたように・・・・。そんなに好きだった男との・・、思い出の品なのか・・・?」
「・・・・・・・・・」
より沈黙が長くなる。
高にどう答えて良いか、分からない。

「答えられないってか・・・・・」
高が勘ぐるように、答えたくなかったわけではない。
やはりその本人を前には、答え辛い。

高は知らない。自分が高を愛しているなんて・・・。

けれども、肯定もしない代わり、否定もしない。
狡いかもしれないけど、それ以外ない。
だから、高にどう受け取っても貰っても、構わない。

案の定、高はその答えを自分の中で“Yes!”と出したようだ。

わざわざ宝物の奪還についていってやったというのに、未だに釈然としない大和の態度に呆れてでもいるのか、高は夜空に向かってふうと重苦しいため息を吐き出す。




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テーマ : 自作BL連載小説
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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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