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66.宝珠の夢

というのも、その二人の兄弟の喧嘩の仲裁に入った母の行動に、心奪われたからだ。
「ケンちゃんもサトちゃんも、仲間で使おう? 順番こだよ! だから、サトちゃんも10数えたら、お兄ちゃんに貸してあげて!」
「でも、僕も今使いたいんだ! サトが最初だなんて、狡いっ! 何でいつも僕だけ、僕だけ!! 我慢するの? お母さんは、僕が嫌いなんだ!!」

母は困ったような、辛い表情で兄の顔を見る。
「そんなワケないでしょ? お母さんがケンちゃんを嫌いな筈がないでしょ? 大好きなんだよ!!」
母が子を愛さないワケはない。
年齢に少ししか差がないとはいえ、度々兄の方に我慢を強いなければならぬ事が出て来る事に、罪悪もちゃんと感じている。
現に、柳眉の間の苦渋の皺がそれを物語っている。

だが、そうだからといって、ここにはそれが1つしかないのだから、それ以外の解決法はない!
兄にしろ、弟にしろ、どちらかが先を譲らなければいけない。

だから、親とはいえ、小さき兄の背に甘える。

こんな時は、どうしても“お兄ちゃん”を頼りにしてしまう。この小さき背中が、 “頼みの綱!”となっているのだ!
だが、それでは、その子の心は満たされぬ思いばかり募る!
だから、母はすっと兄の体を引き寄せると、それに代わるだけの愛ある抱擁をぎゅっと施す。

すると、どうした事だろう? 先程まで喚いていた子が、至極満たされた表情で母にしがみ付く。
先程の騒動はいずこへとばかりの大人しさで、母の胸深くに納まっている。

代価を与えるというならば、他にもお菓子とか別の玩具とかいろいろあったかもしれないが、それでは根本的な解決にならない事もある。
だから、泉希は、母の愛ある抱擁がそれらに替え難い威力のあるもののように感じた。

いや、違う!
元よりその子が求めていたものは、その玩具でなかったのかもしれない。
弟のサトより、自分に目を止めて欲しい・・・。
一心に、母の心を欲していたのかもしれない。
だから、もしその泣いている子がもっともっと小さい赤子だったとしたなら、“泣いたカラスが・・・”の如く、先程自分は何で泣いていたのかも分からないくらいになって満たされ微笑むのかもしれない。

そうだ! 前にもこのような様子を見た事がある。
たまたま泉希の家まで連れてきていた従姉の赤ちゃんが、眠たく不機嫌になって大泣きをした。そして、従姉の胸に抱かれその心音に触れているうちに、泣き疲れて寝ていったのだ。

“母からの愛”は“物欲”にも勝る! 心が満たされれば、どんな欲も不安も取り払う事が出来るのだ。

だから、泉希は徐々に落ち着き満足する兄の姿に、あの八方塞な夢の世界のヒントを得た気になる。
そして、泉希はその印象が心の奥深くに残り、家路へと戻る道中もあの光景が繰り返し繰り返し現れては、離れる事がなかった。

そもそも、ミュルゼンである自分は、何故かあのとぐろを巻いた恐ろしき竜を“幼き子”のように感じたのか?
泉希は、宝がかつて自分達に語っていた“四神思想”にある“青龍”に対する概念を思い出す。

・・・あの夢の世界は、いわば“青龍”の世界
・・・東南西北に対し、龍・朱雀・虎・蛇と亀、青朱白玄(黒)、春夏秋冬がそれぞれ呼応する
・・・東の方角に位置するのは“青龍”で、“青春”! うら若き時代
そして、あの竜こそが、あの夢の世界の象徴となる存在だとしたら!!!

すなわち、あの竜こそが、決して“老いない存在”なのではないか?

永遠の子供・・・。

だから、見た目はあんなに恐ろしい姿であっても、そんな“幼き印象”を得たのかもしれない。
ならだ、あの竜はそうして荒ぶっているのだろうか?
幼き子供の気持ちになって考えてみれば、至極簡単だ!

竜神は自分達を排除しようとするのではなく、むしろ!! 得体の知れない4人に恐れをなして、悲鳴を上げているだけの事なのかもしれない。

ああ、そうだ! あの話だって、子供の気持ちになって考えれば単純な理由からかもしれない。
あの各地に出来たという“竜の鱗”の泉も、人々の雨乞いの唄を純粋に喜んだ竜が、その楽しい気分のままに、同様に楽しい事である水遊びという行為に重ねて、その“楽しさ”を表現したに過ぎないのかもしれない。
それが結果的に大地を湿らせる恵みの雨となって、村人たちの望みに合致した。
そして、村人たちは“神”として、あの竜を崇め奉ったのだ!!

だから、感謝して止まないあの恵みは、単なる純粋無垢な竜の気まぐれ・・・・。

そして、今ミュルゼンが対峙しているあの竜は不安に駆られて、一心に母の愛に似た“安らぎ”を求めている・・・。

泉希は自宅に戻るや否や、さすがに躰も披露しきっていたのか、強い眠気に誘われて、夢枕もせずに眠りにつく。
けれども、その事は余程泉希の心に深く根差したのだろう? そんな手段を用いなくとも、自ずとミュルゼンの心に明かりを灯すものとなるのだった。

   * * *




※ 四神思想について。以前掲載した謎解きシーンを参照して下さい。 ⇒ ★(こちらの27話前後にあたります!) 

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