28.隣人

大和はそのXdayを知っていながら、ずっと知らぬふりを決め込むでいた。
高の方も、取り立てて触れようとはしない。
たが、何気なさを装っていても、その本心は一味違うのかもしれない。
実のところはその日を過剰なまでに意識しているとでもいうのか、ここ最近の高はどことなくそわそわとしていて、落ち着きがない。

大和は、そんな様子に気付いてはいたものの、やはり素知らぬ振りを決め込んだ。
それにどんな藪蛇が隠れているか、分かったものではない。
敢えて気付かぬ方が幸せだという事もある。
大和は少しでも長く、高と共にいる現状を維持したいのだから、尚更だった。

それが、まさに“明日がXday”というところまで差し迫った夜、風呂を先に済ませた大和がそろそろ寝室に引き上げようと腰を上げたところ、高が唇を横に引き結びやや緊張したような面持ちで、大和を引き留める。

胸がドキリと動悸打ち、ざわめく。

もしかして・・・。
“明日は用事があって、遅くなる。先に寝ていてくれ!!“
高は、明日の事をそんな風に、切り出すのだろうか・・・?

だが、高の言葉は、覚悟を決めた大和の思いとは全く別の意味を示していた。

“明日は自分の誕生日なのだ”と・・・。
“だから、外で食事をする予定でいる”と・・・。
そして、“○○レストランのコース料理をリザーブしたから、仕事後○×ホテルのラウンジに来てくれ”というものだった。

そのホテルは都内でも有名な老舗ホテルで、大和もその価値を良く知っていた。
恋人同士のセレモニーともいえるそんな日に、特別ともいえるそんなところに・・・。
何故自分みたいなのが呼ばれようとしているのか、半信半疑でならない。
そんな思いから、ついと心にもない言葉がポロリと零れ出る。

「何で・・? 別に俺じゃなくとも、お前の誕生日を祝いたいような女(アイテ)なんて、他に山といるんだろ?」
別に行きたくない訳でも、祝いたくない訳でもない。
いや、自分がその日に高と過ごしても良いのなら、嬉しい以外なかった。
ただ、“その記念日を共に祝う相手は、果たして‘自分’で良いのだろうか?“と、思っただけなのだ。

だが、大和のいうようなそんな特別な女性は、高にいない。

高にとって、特別なのは今も昔も“大和”しかいない。
もちろん、高だって、大和の心が自分にはないと分かったあの日以降、再スタートを考えなかったワケではない。
実際、大和と別れた後、これぞと思う相手を探して、何人もの女性と付き合ってみた。
だが、そうする事で自分の中にはっきりと芽生えたものは、“やはり、自分には大和以上に愛せる者はいない”という思いだった。
だから、この想いは決して報われないのだと分かっていて、その想いがどうしても捨てられずにいた。

この10年あまり、大和が愛したこの高自身も、ずっと大和だけに心捉われていたのだ。

だから、今では特定の相手を作る事もなければ、ここぞという日も日常に忙殺させていた。
だが、今年はやっとの思いでその大和を捕まえた。心は自分に無かったとしても、特別なその時を大和と共に送りたいと望んでいた。

けれども、大和にそんな高の心の内は測れない。
ここでも、家同士の確執が生んだ根強い対抗意識が仇となって、そんな皮肉な見方しか出来ないでいた。

とはいえ、あの心にもない台詞は、裏を返せば“特別な日を祝うのに自分の存在は邪魔にはならないのか“という、”遠慮“から出たものだ。
可愛げの欠片もないような言い回しでは、伝わりようもないが、そうだった。
だが、やはり結果としては・・・・。

“厭味”を言ったのに変わらなかった。

だから、見る見るうちに、高の表情が強張っていく。
どこか仄暗くような、青ざめた貌・・・。
凍り付いた無表情さで、大和の顔を見据えてくる。
だから、堪らず、顔を逸らしてしまう。

「俺の誕生日だ! その日を過ごす相手も、自分が決める! 今年は・・・、お前と過ごす・・・。だから、つべこべ言わないで、お前はそこに来てくれたら良いんだ! 分かったら、明日はそのつもりでいてくれ・・・」

高は語気を厳しくさせ、有無を言わさぬ調子で、大和に告げる。
そして、これ以上の拒否の言葉は聞きはしないとばかりに、大和に背を向けると、そのまま風呂場へと消えていってしまう。

取りつく島もない・・・。

高はすっかり臍を曲げてしまったようだ。
見えなくなった頑なな背中に、大和はふぅっとため息吐き掛ける。

別に・・・。それなら、俺は良いんだけど・・・・・。

   * * *




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テーマ : 自作BL連載小説
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Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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