35.隣人

「それに、今だから言うけど・・・・。すっぱりと高と別れたのは、自分が望んでいたようには、高の気持ちが自分にないんだと、思っていたからなんだ・・。心では・・・、決してあっさりなんて事、なかった・・・。でも、あの時の自分はプライドが高過ぎて、とてもじゃないけど、そんな見苦しい姿を晒しては、縋れなかったんだ・・・・・」
「大和・・・?」

行き違いはあったにせよ、それは高も同じだ。
互いに簡単に縋り付けなかったから、長い間遠回りをしてきた。

「それに、これは身から出た錆び! 自業自得なんだ・・・。高を陥れようとしたのは、本当の事だから・・・・。本当・・、俺なんて、どうしようもないね? 知らず知らずのうちに、高まで何の得にもならないような意地の張り合いに巻き込んでしまって・・・。ゴメン・・・・・」

全てを曝け出すのと共に詫びを入れる事で、今までの胸のつっかえがすっと流れ落ちていく。
たとえ高がそんな自分に愛想を尽かし、嫌いになったとしても、大和の中でこのしこりが消え失せた意味は大きい。

「なら・・、大和・・・? 今日のこの指輪は・・、受け取ってもらえるのか? 俺は・・・、そのボタンと共に、これも受け取って大切にしてもらいたい!!」
大和は高の顏をはっと見上げる。

「それで、もし受け取ってもらえるというのなら・・・、今度こそ、俺はよそ見なんてしない! お前を試したりもしない! 別れる口実は・・・・、絶対に作らせないっ!! 一生・・、一生!! 大和を俺だけのものに、していたい!!!」

一生・・・・・・。
ああ・・、高はこんな自分を許してくれるのだ・・・。
こんな自分を、望んでくれるんだ・・・・。

「・・・高?」
そっと高の前に左手を差し出す。
そして、視線をその指元に落とす。

「・・・・お願い、・・します」

やや声が掠れる。
やはり長年培われてきた対抗意識は根強く、大和の根底から直ぐに消してしまえる程生易しいものではない。
努めていても、その言葉は喉の奥に引っかかって、思うようにすっとは出てこなかった。

だが、今までに比べれば、幾分かは素直になれたような気がする。

そして、これが28年目にしてようやく、大和が母の強大な呪縛から解き放たれる第一歩となったのだった。
極短いフレーズではあったが、そんな重みのある一言だった。

高もまだ幾分信じ難いような表情を浮かべながらも、至極ほっとした様子だ。
最も愛しく失いたくない人に自らの人生を掛けてプロポーズをし、見事了承をもらったのだ。
並々ならず勇んだ分、その安堵も大きい。

とはいえ、大和が素直になったのも初めての事なら、高のこんな嬉しそう顔を見るのも初めてだ。

少し照れを含んだ、その晴れやかな顔は、また新たに大和を惹き付けるものだ。
だから、大和からも自ずと柔らかな笑みが零れる。
「大和・・・。必ず、幸せにする!!」
「高・・・・」

高は再び緊張した面持ちでテーブルの上の指輪ケースを掴み取ると、その中から婚約指輪を取り出し、大和の左薬指にはめ込む。
部屋の照明の光にあてられ、リングに埋め込まれたダイアモンド石がキラリとした輝きを放つ。

そのリングは、男性がしてもおかしくないような、極々小さい宝石が幾つかはめ込み式に入ったシンプルなデザイン指輪だった。

   * * *

積年の行き違いがようやく解けて消え、晴れて自分達が両想いなのだと知る事が出来たのも束の間! 皮肉にも、その後絶妙なタイミングでドアがノックされる。

ボーイが、食事を取り下げに来たのだ。

もしかすると、中の様子をそれとなく窺いながらの苦心の末の事だったのかもしれない。何だか水を差れたようにも感じるが、それ以外の機会はなかったのだから、仕方がない!
とはいえ、さすがプロといおうか・・・。
醸し出されている微妙な雰囲気にも、敢えて素知らぬ振りを決め込み、手早くワゴンに食器類を積むと、至極丁重な素振りで部屋を後にしていった。

だが、このとんだ部外者の介入のおかげで、すっかりいつものペースに戻されてしまったのは確かだ!
そうなると、簡単には仕切り直せなくなる。

大体からして、これ程に長年渡り培われてきたものをそうは簡単に取り払う事は出来ないのだから、一度あの狂気的な熱が冷めてしまえば、先程の様な雰囲気に持っていくのは難しい。
それこそ、互いの気持ちを全て曝け出したからといって、“はい、今から自分達は恋人です!”というようには変われない。

とはいえ、いつしか自分達も、そんなわだかまりや対抗意識・・・。二人の障害となる何もかもが薄れていっては、普通の恋人同士のような甘い関係も徐々に形作っていけるのるのかもしれない。
ただ、自分達には、それはまだ少し時間がかかりそうだ。




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隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
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