3.執着(ヤクザもの)

とはいえ、これ程にまで侠耶が皆から恐れられ、一目置かれるのには、それなりの理由がある!

侠耶は、この関東一円に幅を利かせるヤクザの出の者だったからだ。
しかも、侠耶は単なる組の構成員の息子というわけではない。関東山竜会系錦織組に於ける現組長の一粒種だった。
ゆえに、侠耶の背後にそんな大きな後ろ盾があると知って、下手に逆らおうとする者はいなかった。

むしろ、当たり障りないところで、寄らず離れずの良きお付き合いをしていこうという者ばかりだった。

とはいえ、いくらそんな絶大な後ろ盾があるにしろ、侠耶本人がヤクザの息子という肩書に胡坐を掻いているような腑抜けた生温い人間であったなら、皆もそれ程気を置いておく必要はなかっただろう。
だが、侠耶は良いに付け、悪いに付け、キレた!

見るからに、その成り立ちに違わない危険なヤツだった。

けれども、同じヤクザ者でも、侠耶がまだ昔の任侠道などを説くような正義感の強いタイプだったなら、存外に救いようがあったのかもしれない。兄貴分だと慕い、侠耶の後もついてもいけたに違いない。
それでも侠耶に言わせたら、ある程度のケジメは付けているのだと言うかもしれない。
だが、何にせよ! 利通の目から見れば、そういう頑固一徹で正統派なタイプのようには感じなかった。

侠耶は生まれてこの方一般的な暮らしを送った事がないのだから、極当たり前ともいえる世間一般の概念は通じなかったし、必要とあれば上手く法の隙間を掻い潜って、スレスレのところを渡り歩いていく男に、行く末はなっていくのだろうと容易に想像出来た。

だから、もし義理立ての上といった事があったなら・・。いや、利通が絡むような事件でも起きたなら、人の道を外す“人殺し”だって、厭わないでやってのけるに違いない。
それくらいの度胸も、あるような人間だった。

だが、そうでなくても侠耶は、そんな昏いオーラを今も身に常に纏っている。

それは、極道者の倅として生まれた侠耶が、決して隠す事は出来ない仄暗さだ。
侠耶そのどうしようもないヤクザの血を脈々と色濃く受け継いでいる。
どうにも・・、そんな血が新たな血を呼び、抗う事さえ出来ずに、ここまでこうして背負っては生きてきているのだろう。

ゆえに、侠耶は一見頭脳明晰で優等生の仮面を被ってはいるが、一皮脱げば獣だった!

取り繕った冷徹そうな仮面の下で何を考えているかだなんて、一般人である利通からはまるで分からなかったし、想像すら出来なかった。
しかも、侠耶は派手な見た目に反して寡黙なタイプだったから、必要以上の会話もしようとはしなかったから、尚更な事だ。
常に掴みどころがなく、利通に怖いくらいの執着を抱いている事以外は、皆目読めなかった。

そして、だからこそ、侠耶がいつどんなふうにして自分に挑んでくるのだろうかと、利通はその出方を測りかねていた。
侠耶は絶対的な存在であったにも関わらず、利通に婉曲的にアプローチしてくるだけで、これといった決定打をなかなか打てこようとしなかったから、より分からなくさせていた。

果たして侠耶はどれ程の事を望み、どこまでをその行動に移してくるのか?

利通は常にその侠耶の出方加減を慮っては、この2年間ちょっとを、侠耶に襲われるのは今なのか今なのかと、不安な思いのままずっと過ごしてきた。
とはいえ、これまでの間利通が手つかずのままでいられたのには、利通自身が上手く侠耶をはぐらかしてきた事が、かなりの部分で大きい。

そんな風に侠耶は容易に心の読めない人物ではあるのだが、そんな一筋縄ではいかぬ人柄を、侠耶は“目は口ほどに物を言う”とばかりに、その鋭い双眸に如実に表させていた。
いくら侠耶が取り繕ったような澄ました笑みを浮かべたとしても、その双眸の奥の瞳を和らがせる事は決してなかったし、ともすれば始終傍らにいた利通でも、侠耶が心から笑っているところなんて見た事がなかった。

あの眼には・・、ヤクザ者の血をいやと感じる。
仄暗い闇だ!
血生臭いといったら、ありゃしない!

だから、侠耶という名前は、“任侠”の“侠”から来た名だというのに、音の響きが同じの“狂気”の“狂”や恐怖の“恐”といった字の方が、侠耶のイメージにはしっくりとくるように思えた。
いや、スパッと切れ味の良い凶器の“凶”・・、もしくは・・・・。

利通にとっては、大凶の“凶”というのが最も相応しいのだといえるのかもしれない!

だから、その“キョウ”に続いて下にくる“耶”も、同じ音である“夜”をあてる方が似合った。
ゆえに、両方の意味を合わせ持っても、侠耶は闇と闇の間を渡り歩くような最悪最低なイメージしか持てぬような男だった。

ゆえに、たとえ侠耶に後ろ盾を知らない人間でも、いや侠耶にそれがなかったとしても、いやと発っしている只者ではないオーラに、その与える印象を変える事は出来ないだろう。
その存在だけで威圧される。
やはり、内から零れ出る本質は隠せない。

だから、皆が常に侠耶のがトラップを踏まないよう、ピリピリとしていた。
本当に、振り返ってみても、緊張感のある日々を送っていると思う。




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