11.執着

何とかそれまで耐えに耐えてきた利通だったが、その視線に・・。いや、侠耶から発せられる無言の圧力に、とうとう我慢ならなくなってしまった。
利通は参考書を畳むと、その場から逃げ出すように、侠耶に一言「お先に」と声を掛け、一目散にシャワールームへと駆け込む。

もちろん、簡単に侠耶に入って来られないよう、中から厳重に鍵を掛けた。
そして、そうした後で、利通はその脱衣所の壁に背を持たれ掛けさせると、肩の力を抜き、ほっと一息付かせる。

怖い、怖い、怖い・・・。ああ、侠耶が怖い・・・・。
やはり、今日こそ犯られる! 確実に犯られる!!
怖い、怖い、怖い・・。侠耶が怖くて堪らない!!

とはいえ、いつまでもここで籠城を決め込んでいるわけにはいかない。
なんせこれからの侠耶との付き合いを考えれば、それは決して良策ではなかったからだ。
それこそ、この事が反動となって、後に待っていよう侠耶からの報復は、自分の想像を絶するものになる事は間違いなかった。

侠耶に・・、犯され続ける日々なんて、考えたくない・・・・。

だから、利通はシャワーを極力短時間で済ませると、嫌々だというのに、そんな気持ちなど億尾にも出さず、シャワールームから出ていった。
客室と浴室を隔てるこの一枚のドアを開けるには、想像以上の勇気が要った。
幾度となく躊躇を繰り返した末に、ようやくその錠を解く事が出来たくらいだったから、相当なものだ。

利通はベットルームに戻ると、そのまま一直線に自らのベットへと向かう。
そして、侠耶に一言「おやすみ」と告げたきり、布団の奥深くへと潜り込んでしまう。
いかにも“疲れたから、先に寝る”と言わんばかりに、カモフラージュして・・・。
更に、利通は静かに目を瞑り、侠耶の存在自体をシャットアウトする。

そんなつれなくも、取りつく島もない利通の背中を、しばらくの間侠耶はじっと静かに見つめていたが、諦めたのか重々しいため息を一つ吐き出すと、そのまま浴室へと消えていった。
そして、その浴室からシャワーのコックを捻る水音が聞こえてくると、利通は息を吹き返した魚のように、再びほっと一息付かせる。

この断続的に続く緊張は、体に悪い。

利通は侠耶をはぐらかせるための便宜上の言い訳でなく、この度重なる心労ゆえに、心底疲れ果てていた。
けれども、過敏となった神経が休まる筈がない。
ただ無駄に身体を横たえているだけで、そんな著しい疲れに反して、眠気は一向に襲ってこなかった。

これからの闘いに備えて、暗く静まった部屋で身体を休めようと必死に瞼を伏せたが、やはりダメだった。
そして、そうこうするうちに、侠耶が風呂から上がってきたのが、虚しくも分かった。

一瞬にして、あの緊張感が蘇る。

それで全身の筋肉という筋肉が強張ったのが、自分でも良く分かった。
だが、利通は敢えて“既に眠入ってしまったのだ”と、寝たフリを決め込む事にした。
利通は侠耶に背を向けたまま、ゆっくりと静かに呼吸を繰り返しては、掛け布団を上下させる。

あたかも侠耶の入浴の間に穏やかな眠りについてしまったかのように・・・。

苦しくとも、夜が明けるまでの間を有耶無耶とこのまま凌ぐしかないが、これでいつものように付け込む隙もなくなった筈だ!
そして、まず侠耶に強行突破される事もないだろう?
利通はそう高を括っていた。

だが、侠耶はやはり利通の一枚も二枚も上手だった。いけもしゃあしゃあと狸寝入りする利通のベットへと、潜り込んできた。

ドキリ・・。
思わず体がビク付きそうになるのを、何とか堪える。
いつまでこの自分の狸寝入りを誤魔化せるか、至極不安に感じた。
とはいえ、利通には耐え凌ぐ道しかなかったし、最大の危機が今自分に差し迫ろうとしている事も確かだった。

布団に潜り込んできた侠耶は、利通の背後から覆うようにして、その身体を添わせてきた。

利通の身にピッタリと接した侠耶の体温が、寝巻越しに伝わってきて、利通はぞっと肝を冷やした。
今の利通はただ寝たふりをしているだけで、意識は当然はっきりしている。
ゆにえ、この緊迫した状況にも、不快な感触にも、耐え難い思いで一杯だった。

とはいえ、侠耶は馬鹿じゃない! 利通以上に抜け目もないなら、頭もキレる!
だから、利通がまだ眠っていない事も、ちゃんと見抜いている筈だ。
そして、だからこそ、そうと知った上でこの状況を逆手に取り、利通のベットへと恐らくわざと潜り込んできたのに違いなかった。

ゆえに、侠耶は利通が尻尾を出すのを、今か今かと待ち構えている筈なのだった。




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