30.デベソな弱点

正善とあんな一件があってからというもの、梓の方から正善の事を一切シャットアウトした。

会いに行く事はもちろん、携帯やメールといった連絡ツールは全て封印し、大学構内でも正善にばったりと出くわさないように、行動パターンを変えるなどの工夫をした。
その甲斐あってか、あの日以来、梓は正善と一度たりとも顔を合わせる事もなければ、一言も言葉を交わしていなかった。

けれども、それが非常に堪えた。

敢えて自分から正善を切ったというのに、今の状況が辛くて堪らない。
とはいえ、その辛さも単に梓の策によるものだけなら、断ち切るのも簡単だった。
自らが課したその障害を、全て取り除けば良いだけの事だ。そうすれば、正善とコンタクトを取る事も、直ぐにでも可能となったに違いない。

だが、正善もそれ以降、梓に一切関わってこないのだから、事態は困難だ!

その事が、梓に重く伸し掛かる。
これでも、正善が梓との仲を修復しようと、必死に絡んできてくれたのなら、少しは救われたかもしれない。
たとえ連絡ツールが塞がれようが、大学で会えなくとも、正善は梓の住まいを知っているのだから、これまでにいくらでも会いに来れた筈だ。
だが、事実はそうじゃなかったから、打ちのめされる。躍起になっていたのは、自分だけだ。

正善は、俺の事なんてもう・・・。

梓も、正善が自分に気がない事は、今までも十分に分かっていたつもりだ。
けれども、どこかで“他よりは特別な存在なんじゃないか”と、期待している部分はあった。
正善は言い寄ってくる女達のように、梓を邪険に追い払ったりはしなかった。それに、勉強とは言いつつも、度々身を重ねていたわけだし、必然と一緒に過ごす時間も他よりは多かった。

“恋人”ではなくても、正善に近いところにはいたと思う。

けれども、梓が思っているのと同様に、正善の方は望んでくれているわけではなかったのだと、嫌でも分からされる。

そう・・。正善にとって、自分など取るに足らない存在だったという事だ。

ああ・・。梓は嘆く。
自分は、告白もする前から、失恋してしまったようなものだ。
もしかしたら正善が詫びに来てくれるかもだとか、正善が必死に連絡を寄越してくれるかもと期待し、躍起になって対策を施していた自分が、本当馬鹿みたいだ!
そう・・。いかに馬鹿馬鹿しくて、惨めで、憐れなのか・・、分からない!

けれども、正善の本心が分かった今、正善に縋り付く事なんて出来ない。
もちろん自分のプライドが許さないというのも少しはあるけれど、何より気のない相手から言い寄られるなんて迷惑なだけに違いない!

(押しつけの愛なんて、要らない・・)

無理に捻じ曲げても、通じ合えないなら、虚しいだけだ。
いくら我儘な梓でさえ、そんな事は憚られた。

そして、今更だけど、迂闊に正善を罵倒した事を、梓は目一杯悔やんだ。
引き金を引いたのは、他ならぬ梓自身だからだ。
あそこで自分さえあんな事を言わなければ、愛のない馴れ合いの関係とはいえ、“レクチャー”という大義名分を理由に、今も正善の傍に居られたはずだ。それに、正善の本当の気持ちにも、触れずに済んだかもしれない。

切なく悲鳴を上げる胸元に、梓は手を当てる。とてもじゃないけど、食事を取る気にはなれない。
あれ程正善に“食事を取れ”、“魅力がなくなる”と言われたのに、手っ取り早く栄養を補える補助食品ですら、手つかずのままだ。

とはいえ、ダメージが大きかったのは、何を隠そう! 正善の方だった!!

たとえクマのような大男であろうが、ヒゲを蓄えたズボラ男だろうが、ハートは硝子の如く、存外に繊細だった。
正善も、自身の迂闊な言葉で、梓を深く傷つけてしまった事に、相当なショックを受け、3日3晩寝込んでいた。

しかも、受けたダメージも半端ではなく、生まれてこの方これ程のものは経験した事がないというぐらいの想像を絶する甚大なものだった。だからこそ、その後もどっぷりと沈み込んで、なかなか立ち直れずにいたのだ。
それこそ仕事は上の空でしつつも、講義に顔を出したのは、随分と日が経ってからだった。
ゆえに正善は、行動に移せない間に、梓との関係が決定的なものとなるくらい、出遅れてしまった。

だが、仕方がない! 正善も梓の事が、本気で好きだったのだから、ダメージも受ける!

とはいえ、あれから正善に一切会っていない梓には、そんな事など想像すら出来ない。
たとえ正善が地にめり込む程落ち込んでいようが、何事も手つかずになっていようが、まるで分からなかった。
それどころか、音沙汰がない事に一人心を痛めていた。
そんな風にして、二人は互いに恋心を抱きながらも、すれ違っていたのだった。

とはいえ、正善がもたもたすればする程、二人にとって不都合な事も起きてくる。




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