32.デベソな弱点

そんな疑問を感じつつも、下の名前を丹羽にちょっと呼ばれたくらいで、湧き上がった嫌悪感は凄まじいものがあった。
少し前の梓なら、丹羽に声を掛けられただけでも、有頂天だった筈なのに・・。
それが今では、180度異なる印象となるのだから、人の心は移ろい易い。

いや、丹羽に向けた好感というのは、上辺だけの単なる憧れだったから、こうも変わってしまったのかもしれない。
そして、そんな憧れなんて一気に薄れさせてしまうくらい、本当の恋は絶大で、フラれた今も、梓の心は正善への想い一色に埋め尽くされているままだ。
だから、今は他に何かが入り込んでくる余地も、自ら気持ちを新たにする余裕も、まだ全くない。

とはいえ、正善の存在の有無以前に、丹羽へ抱いた嫌悪感は、その人間性に依るものが大きいのかもしれない。

最初こそは、その外見の良さに惑わされもしたが、今ではその見た目の華やかさに反比例した中身の薄っぺらいヤツだと思っている。
モデルという副職を鼻に掛けてもいれば、ちやほや持て囃されなければ気が済まない。周りには、常に大勢の友人を侍らせて、良い気なものだ。

とはいえ、梓も人の事は言えない! かつては、自身こそがそうだった。

だが、正善と関わって、本当の恋を知った今、梓は変わった!
上辺だけのものが、どんなに虚しいものか・・。心から人を愛する事が、どんなに素敵な事か・・・。
たとえ切なくも辛い恋であっても、心に沁みてその真価が分かる!
未だに顔の良し悪しだけで恋人を選んでいるような丹羽なんて、下衆(ゲス)にしか見えない。

「そうだね!」
梓は何とかその嫌悪感を胸の奥に納めて、丹羽に返す。
とはいえ、それがつれないものとなっても、仕方がない。そもそも、丹羽を相手にする気は全くないのだから、それくらいのつれなさがあった方が、都合も良い。

だが、丹羽はそれで気分を害したわけでも、懲りたわけでもないようだった。
甘ったるい笑みを顔に貼り付かせ、必要以上に梓の方へと身を寄せてくる。迂闊に身じろげば、肩が触れてしまうくらいの至近距離だ!
本当に・・。鈍いのか、あつかましいだけなのか・・。

「相変わらずだね? 梓がつれないのは今に始まった事じゃないけど、俺に声掛けられてそんな気のない返事を返してくるのは、本当っ!! 梓くらいだよ!」
人懐っこい風を装っていても、チクリとした嫌味を混ぜる事は忘れない。
だが、誰もが丹羽に声を掛けられれば喜ぶと、思わないで欲しい。

「そう?」
だから、梓の方も“何もそれは俺だけじゃないと思うけど?“というニュアンスの嫌味を、たっぷりと含ませて返してやる。
あからさまな邪険とする態度に、丹羽も大袈裟に肩を竦(スク)めてみせる。
とはいえ、丹羽の精神はどこまでも図太い。嫌味が通じたのなら、早くどこかに行ってくれれば良いものなのに、そんな都合良くはいかないようだった。

それどころか、百戦錬磨の丹羽の闘志を、下手に掻き立ててしまったみたいだ。

「そうだよ! それにさっきも、声掛けようと思っていたのに、講義が終わった途端、教室から足早にいなくなっちゃうんだから・・。それ、分かってたんでしょ? つれないよね!」
「・・・・」
「だから、こうして必死に追っていかなきゃね・・。本当、最近の梓は前にもまして、捕まらないんだから!!」
「・・・・・」

だが、“必死だ”と言うわりに、呼吸が乱れた様子はない。けれども、そのくちぶりからすると、梓目当てにわざわざここまで来たのは確かなようだった。
とはいえ、そうと分かっても、もちろんの事! 不用意に “何か用?”などとは返せない。丹羽とこれ以上、無駄話なんてしたくないのだから、藪蛇となりかねない。

「でも、やっぱり学内一の美女王様には、そう簡単にいかないって事だよね!」
「っ・・」
「そうでしょ?」
「!!!」
「それに、本当・・。最近の梓は艶っぽくて、敵わないよ! 前から良いとは思っていたけど、この頃は特にね・・・」
「・・・・・・」

立て続けに、あからさまな態度を示されても、困る。煩わしいばかりだ。
だが、丹羽が言う通り、近頃の梓は綺麗になったと、自分でもそう感じる!
恋煩いで痩せはしたものの、ホルモンの分泌加減なのか・・。それとも正善と関係を持ち、自分でも知らず知らずのうちに、喉から手が出る程欲しかった色艶が備わったからなのか・・。幼さが抜け、華やぎの中にもしっとりとしたオーラを纏うようになってきたと思う。

だからこそ、必要以上に男を焚き付けてしまうのだろうか? 以前に比べると、隙あらばと寄ってくる男が増えたように思える。
だが、正善と一緒の時には、そうとは全く気付けないでいた。それが、正善の保護がなくなった途端・・。特にここ数日間は、それこそ休む間もなく次から次へと梓の元に男が押し寄せてくるのだから、いやでもそうと悟る。
そして、そんなのだからこそ、失恋の痛手に加えて、その事が梓を至極悩ませていた。




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