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52.執着

利通に性的な目が向けられなかった事だ。

その当時の仁科は、鬼畜的片鱗はあったとはいえ、性的趣向は一応のところスタンダードを貫いていた。だから、性的暴行を利通に加えるつもりはなかった。
いや、狡賢い仁科の事だから、端から自らの手を汚さずして、上手くやろうと思っていたに違いない。ゆえに、我が身を脅かす犯罪行為に手を染めるなんて事は、毛頭もなかったのだろう。
そして、結果的には、それが保身に繋がったのは間違いない。もし少しでもそんな兆候がみられたなら、確実に侠耶は殺人者となっていたに違いない。

それ程、あの時の侠耶は、狂気じみていた。

たった一人だというのに、関わった人間に次々と殴り掛かり、あっという間に血の海が広がった。
そして、返り血を浴びた侠耶の顔に、薄ら笑いが浮かぶのを見て、利通は腰を抜かした。
それこそ、侠耶の名前の“キョウ”の字が“狂”だと思ったのは、まさにその時だったように思える。
今でも利通の脳裏には、狂ったように報復を加える侠耶の恐ろしい姿が、色濃く焼き付いている。

そして、この事件こそが、利通に侠耶の執着の深さと、本当の意味での侠耶の怖さを、深く認識させる事となったのだった。

とはいえ、この事件を知る者は、それ程多くはいない。侠耶にあれ程纏わり付いていた沢村達だって、全容をはっきりとは知らないままだったに違いない。
被害者も出て、これ程大きな暴力事件沙汰だったとはいえ、やはり侠耶のバックボーンは確かなものだった。組の者がこの不始末をねじ伏せて、闇に葬り去ってしまった。
恐らく、あの香山あたりが、泣く泣く動いたのに違いない。

そして、やられた仁科の方だが、彼もいつまでも侠耶との力量差が把握出来ないような、愚かな人間ではなかった。潔く負けを認め、尻を捲った。
仁科の口から屈辱的な謝罪が述べられると共に、彼は以後一生涯侠耶の“忠実な犬”になる事を誓った。
そして、この一連の騒動に、ケリが付いた。

だが、その誓いというのは、普通考えるような、単なる口約束といった生緩いものではなかった。一介の高校生達が取り交わすのには、とても不相応な契(チギリ)だった。
堅気の約束だというのに、侠耶と仁科は“兄弟仁義の契”を交わすが如く、互いに指の腹を刃物で傷付け合って、“血の杯”を酌み交わしたのだ。

そして、仁科はまこと最上級の犬となった。

それこそ仁科は賢かったから、それが一番自分にとって最良の事だと判断したのだろう。決して、あの場の一時凌ぎの約束ではなかった。
その証拠に、仁科は卒業までの間、その務めを全(マット)うした。
いや、それは卒業後も続いていたように感じる。

利通は仁科と直接的な接触はなかったから、良くは知らないものの、侠耶の命を受けて、仁科が何かと動き回っている感はあった。
だが、そうだからといって、今も続いているかどうかは、離れていた利通には、本当のところは分からぬ事だった。
けれども、仁科が侠耶の会社に存在しているという事は・・。

「今でも・・、侠耶の・・・」
「ええ、もちろんですよ! 私はあの時、社長と“血の杯”を交わしましたから!! 今でも変わりなく、”忠実な僕”です!」
「・・・・・・」

ここまで言うものなのだろうか? この仁科は、元々有能な人物だ! 本来なら、高いプライドを持っていただろう。
それに、これだけの男がいつまでも“侠耶の犬”に甘んじている筈がない! だが、仁科は未だにそうあり続けているのだと言う。

とはいえ、仁科が敢えてその道を選んでいるのも、分からなくもない。
それなりに侠耶の元が、居心地の良いのだろう。これ程の男が動かぬのが、何よりもその証だといえるのかもしれない。
そして、錦織組の舎弟達を見てもそうなのだから、良く分かる。

侠耶の元には、自由がある。

一見、侠耶の遣り方は横暴に見えるが、自分の手足としてこき使う代わりに、ある程度の責任と自由を与えてくれる。
あれでいて、懐は存外に広いのだ・・。
だから、野心ある者ならば、後ろ盾もある上、且つ融通の効くこの環境は、普通の企業で働くよりも恵まれた条件下にあるのかもしれない。

それに、侠耶のあの性格・振る舞い方を鑑みても、おこぼれとして仁科も相当に美味しい蜜を、吸っているに違いなかった。

というのも、高校時代、同様に犬として侠耶に侍っていた沢村や持田達も然りだった。その恩恵を、実に余すところなく存分に受けていたように思える。
ゆえに、大なり小なりの差はあっても、この仁科もそうである事は容易に想像が付いた。

それに、これだけの男だ! 侠耶の方も、当然ながら使える存在として、高く評価しているに違いない。
互いの利害が一致している以上、こんな美味しい事をみすみすしない手はないが、いかにも曲者同士が思いつきそうな道だ。

しかし、そうなると、利通には不利だ。
この仁科の存在だけでも手に余るというのに、背後に控える侠耶がいつ利通の前に姿を見せるか、分かったものではない。

いや、自分が動けば、確実に侠耶も動く・・。




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