60.執着

「野崎さん、少々驚きましたか? ですが、ここもうちが経営する系列店でして・・。ですから、お気兼ねなく・・」

野崎は、そう語る仁科に肩を押され、侠耶と利通の向かい側の席に押し込められる。そして、その手前に、仁科が封をするかのように座れば、利通同様! 野崎の逃げ場も、”無い”に同じとなった。
一見、仁科はそんな風に一応の気遣いを見せるものの、その本質は侠耶と変わらない! たとえ取るに足らない弱い獲物にも、容赦はしない。

野崎は、落ち着かないのか、情けない顔をして、利通に縋るような目を向けてくる。
“どうしたら良いんだ?”
場違いなところにやってきてしまったと言わんばかりの、野崎の戸惑いがいやと伝わってくる。

だが、そういう利通も、この侠耶を相手に今からどうやり過ごしたら良いのか、自分の事で手一杯で、野崎には悪いが、構っていられない。
利通は、その縋る瞳を断ち切って、備え付けのキットで酒を用意し始める。

ここのバーも、利通が侠耶に初めて最後まで犯されたあの店同様、隅にピッチャーやグラス、各種の酒が用意されている。これらは全て、侠耶のキープボトルなのだろう。ラベルの下に、乱雑なサインがある。
だから、今回もたとえ利通達が泣き叫ぶような状況となったとしても、助けとなる者の介入は一切当てに出来ないのだと、覚悟を決める。

「取りあえず、水割りで・・。いや、ロックに・・・・???」
「何にするかは、任せる。だが、利通! 酒を用意するというのなら、数は一先ず3つで良い!!」
「3つ・・・?」
「そうだ。お前の分を除いて、3つだ!」
「っ!!!」
「本来なら、そうだな・・。記念すべき”お前からの”接待だというのだから、ドンペリの1本でも開けて、祝ってやっても良かったのだが、今回は何と言ってもお初の事だ!!」
「・・・・・」

お初だから、どうしたというのだ?
・・・・本当に、侠耶・・。どういうつもりだ?
途端に、利通の柳眉が寄る。

「もっと趣向を凝らした方が、良いだろう? だから、お前の分は先立って、特別に用意させてもらった!!」
「っ!!!」
「直に、特注カクテル(ソレ)を、ここに運んでくるだろうよ!!」
「・・・・・・」

余分な気遣いだ! 敢えて特注品を用意するなんて・・。
やはり、侠耶は何を企んでいるというのか?
嫌な予感が過る。
利通は、皆から顔をすっと背けさせると、ギリギリと歯噛みする。

だが、一人状況を把握出来ないでいる野崎は、そんな破格な扱いに、妬ましげな視線を寄越す。不服そうだ。
一体からして、先程までこの雰囲気に狼狽えていたのは、どこの誰か・・。
“喉元過ぎれば”というヤツかもしれない。

だが、そう言うが早いか、利通の思いを余所に、VIP個室の重厚な扉がノックされると、黒でシックに統一された装いのバーテンダーと、食べ物を手にしたホール係が2,3人入ってくる。
食事を取っていない利通達の事を考慮してか、先付の他、生ハム・チーズ・野菜といったオードブル類に加えて、サンドウィッチやカルフォルニア巻などの軽食まであった。

そして、そのホールスッタフが立ち去り、バーテンダーだけになると、その専用のカクテルとやらを、利通達の目の前で作りだした。

試験管の形をしたシューターグラスに、カルーア、アマレットを、それぞれ3/1ずつ層にして注いでいく。そして、その最上層に、白濁としたフレッシュクリームを、ふんわりと浮かばせた。
見るからに、これが特徴あるカクテルであるのは、確かだ。

利通も今までにショットバーに出入りし、様々なカクテルを試し飲んだが、こんなカクテルは口にした事もなければ、実際に目にした事もなかった。
とはいえ、風変りだとはいえ、目の前で作ってくれたのだから、いくら侠耶の特注品といっても、媚薬が入っているというわけではないのだろう。

だが、そうは言っても、一見して、かなりのアルコール度数の酒である事は分かった。

「・・っ!!!」

利通は、顔を強張らせる。
バーテンダーは、利通のそんな様子には気付いているのだろうが、始終ポーカーフェイスで、慇懃に立ち居振る舞う。そして、必要以外の雑談すらする事無く、そのカクテルを作り終えると、その部屋から直ちに退出していった。

「なら、利通? 手始めに、これでも呑んでもらおうか!!」
「ぅ・・・・・」

こんなアルコール度数高そうな酒・・・。
しかも、今自分は空腹なのだから、そんなところに、こんな物を飲まされては、堪ったものではない。
容易に、酔い潰れてしまいそうだ・・。




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