スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2.フェイクデレラ

けれども、そんな風に思っていても、回を重ねるうちに、徐々に気が大きくなってくる。

だから、実は、自分を知る人が多く集まる大学ではその姿を晒すのは無理でも、知らない場所であるならば大丈夫なのでないかと、生まれて初めてクラブというところに、その姿で行ってみた。

もちろん、中身は地味な実のままなのだから、一歩店内に踏み入れただけで、泡食った。
大音響の音楽、密度の高さ、きらびやかな人種。どれを取っても、今までの実の世界にはないものばかりだった。
だから、そこで出会った人々とも、ろくに会話する事も出来ず、何とか “サギリ”だと、偽名を名乗るので精一杯だった。
だから、実の中でも、この偽りの姿で人と接するのには、多分に“無理”を感じた。おそらく、その一回限りになるだろうと思えた程だった。

けれども、“喉元過ぎれば…“で、数日経てば、また気も変わってくる。

“サギリ”として過ごしたのは数時間だけだったのに、その数時間が実は忘れられず、2回が3回、3回が4回と…、そんなスリリングな偽装を楽しみはじめた。
しかも、本人が望まなくても、“サギリ”はその並外れた外見が元となって、多くの注目を浴びた。
それも、あの印象的な瞳で少しばかり見つめただけで、いとも簡単に人々を魅了する事が出来たのだから、驚きだ。

だから、回を重ねれば、重ねる程、“サギリ”の内面に反して、周りの者達は “サギリ”を放っておかなかった。
すると、その “サギリ”像だけが勝手にどんどんと一人歩きして、いつしか“サギリ”はこの界隈で、カリスマ的存在にまで登り詰めていた。

そんな折り、”サギリ”の名を今呼んだ彼と、出逢ったのだ。

「よ、陽太郎…………」

けれども、その彼と偽りの恋愛をどっぷりとし続けて苦しみ、ようやく逃げ出した今は、もう二度と会うつもりはなかった。
サギリは、その姿を見止めて、表情を曇らせる。

だが、今の自分の居所が陽太郎にバレたのなら、このまま逃げ帰るのは無理だろう。

その彼の名は、筧陽太郎(カケイヨウタロウ)。
実とは異なり、それが本名であるようだった。しかも、彼が語っている事が本当ならば、大学は違えど、学年も年も実と同じ齢21の大学3年生だった。

そして、その名が示す如く、陽太郎は“太陽”のような、明るく存在感のある人物だった。
……実とは、対称的な人間だ。
恐らく、 “サギリ”になる事がなかったなら、実とは関わる事はもちろん、出会う事すらなかった存在だ。

そして、こんなに愛される事もなかった……。

けれども、“サギリ”はあくまでも偽りの自分なのだ。どんなに逆立ちしたって、実は実でしかない。
実も、陽太郎の事は密かに好きだったから、自分に寄せられる過度の好意は喜ばしい事だったのだが、所詮陽太郎の目線の先にいるのは、偽りの自分“サギリ”でしかなかった。
だから、想いが深まれば深まる程、実は偽りの自分と真実の自分との狭間で、次第に苦しむようになっていった。

だから、どんなに実が陽太郎の事を好きでも、叶わぬ恋でしかなかった。
それに、本当の自分を陽太郎に曝け出して、愛してもらえる自信も、実にはなかった。

そして、付き合えば付き合う程、その歪に押し潰されていった実は、ついに陽太郎の前から逃げる事にしたのだった。

とはいえ、“サギリ”は実の全てと言っても過言ではないぐらい“理想の自分”だった。
“ダメな自分から、何とか抜け出したい!!!”
そのコンプレックスに、長年苛まれてきた実としては、この期に及んでも、その “サギリ”である自分を、完全には捨ててしまう事が出来なかった。

(やはり、ダメな僕だ………)

陽太郎から完全に姿を消すには、“サギリ”を封印してしまう事が一番であったのに、実は“サギリ”であるまま、拠点としていたクラブから、陽太郎が行かない店へと、その行動範囲を移した。
店を移る際、密かに実は“サギリ”として再びやっていけるかどうか心配していたのだが、それは杞憂に終わり、既にこの界隈では“サギリ”のカリスマ力は不動のものとして定着していたために、別の店でもすんなりとその存在を受け入れてもらえる事が出来た。

けれども、人の口に戸は立てられない。
陽太郎に居場所が割れるのは、あっという間だった。

まだ…、1か月も経っていない………。

けれども、陽太郎に見付かったならば、いつまで逃げていても、仕方がない。
自分達は、一度しっかりと話し合う必要がある。
サギリは、その話し合いに全く乗り気はしなかったものの、陽太郎に連れ出されるがまま、その店を後にした。

   * * *




 / 前(初回) / 登場人物紹介 / 総合目次1(最新作~) / 総合目次2(旧作品)

いつも読んで下さり、ありがとうございます!
よろしければ応援ポチリして頂けるとうれしいです
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

ばけもぐ

Author:ばけもぐ
隠れ腐女。オリジナルのBL小説を創作しています。
傾向;男臭い/強気受け多し。切ない系~爆笑系。リーマンもの、体先行型多し。ハピエン。
拙い作品ですが、楽しんでいって下さい。
尚、誹謗中傷、未成年の閲覧、画像の無断転用はご遠慮願います。


本館(当ブログ)目次↓
dreamtripbana.jpg
分館目次↓
dreamtripbana.jpg
twitter↓
@bakemogu53

ランキング参加しています!
よろしければ応援お願いします!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
人気ブログランキングへ


現在の閲覧者数:


おすすめトラコミ&サーチ
にほんブログ村 トラコミュ ボーイズラブへ
ボーイズラブ
にほんブログ村 トラコミュ BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!へ
BLイラスト・漫画・小説何でも書いちゃう!
にほんブログ村 トラコミュ 小説15禁・18禁(性描写あり)へ
小説15禁・18禁(性描写あり)

最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。